シニア女性は骨の薬にも要注意
シニア女性が気をつけたい病気に骨粗鬆症(こつそしょうしょう)がある。
閉経や加齢に伴い骨密度は低下するうえ、食事や運動など長年の生活習慣も骨密度に影響するため、「骨の生活習慣病」ともいわれている。この病気も生活習慣の改善が治療の最優先で、必要に応じて薬物治療が加わるが、薬の頼りすぎはキケンだ。
ある女性のエピソードを紹介したい。
骨粗鬆症対策に熱心な70代女性は、病院からカルシウムの吸収を促進するためのビタミンD製剤をもらってのみ、スポーツジムにも通っていた。
ある夏の暑い日、ジムで運動後に入浴して気分が悪くなり、手足にしびれも出たので救急外来へ駆け込んだ。脳梗塞を疑われ頭部を撮影したが異常なし。念のため一晩入院し、翌朝の血液検査で高カルシウム血症と判明した。
「実は彼女は、ビタミンDの他にカルシウムのサプリものんでいました。救急外来で真っ先にそれを伝えていれば、血液検査だけで済んだはずです。
カルシウム成分の過剰な摂取と大量の発汗で、血中のカルシウム濃度が異常に高くなってしまい、体調不良を招いたのです」
自己判断で必要以上に薬やサプリをのんではいけないと肝に銘じたい。
また、シニア女性がよくのむ薬の1つにコレステロールの薬があるが、これものみ続けるべきか、慎重に判断したい薬のひとつだ。
いわゆる悪玉コレステロールの数値が140mg/dLを超えると、高LDLコレステロール血症という診断になるが、閉経後の女性は悪玉コレステロール値が急上昇しがちだ。
そのため、基準値を超えたらすぐに薬を出すべきなのか、遺伝や動脈硬化などのリスク要因がなければ薬は不要ではないか、と考える医師もいるのだ。
実は平井先生も、この薬をのみ続けている1人だが、やめどきを思案中だという。
「この薬は副作用はきわめて少ないものの、のむとてきめんに効果があるかというと微妙かなと思っています。数か月やめてみると確かに数値は上がるので、いまのところのんでいますが、個人的には一生のみ続ける必要はないと思っています。いずれはやめるつもりです」
のむ薬の必要性を判断できるのは平井先生自身が医師なればこそ。素人の私たちはくれぐれも、自己判断で処方薬をやめてはいけない。
「10年、20年先に深刻な事態にならないためにのむのが生活習慣病の薬ですが、一生涯のみ続ける薬だと思い込む必要もありません。生活習慣が改善できれば薬を減らす・やめることは十分に可能です」
その薬が本当に必要かを医師に聞きづらければ、かかりつけ薬剤師を持とうと平井先生は提案する。
「薬局での支払いが3割負担で1回60円または100円増えることになりますが、契約した薬剤師さんにいろいろと相談できます。のんでいる薬が多い人は一度検討してみてもいいかもしれません」