病院との関係が切れがん難民へ

 とはいえ、「抗がん剤を選択しない」=「生きることの放棄」ではない。

「ステージ4の標準治療である抗がん剤治療をしたくない患者さんは、治療を受けないのであれば、通院そのものを病院から断られてしまうことも、まれではありません。それゆえ代替療法や民間療法を探し求める人も少なくないんです」

 藁にもすがる思いで怪しげな代替療法や民間療法、高額な免疫療法などを自費で受ける人々もいる。

「このような人は“がん難民”とも称されます。私もがん当事者となった今、取り組むべきことはこれらの人々を支援することではないか……そう思いを巡らし、たどりついたのが“がん共存療法”だったのです」

がんが存在していてもすぐに命に関わることはありません。増殖が抑制できれば、がんとともに生きていくことは可能です」

 副作用がなく延命ができ、費用も極力かからないものはないか……。代替療法やさまざまな文献を調べ、出合ったのが“糖質制限ケトン食”。

がんは成長するためにブドウ糖=糖質を必要とします。糖質を抑える食事をすれば、がん細胞の増殖の勢いを抑えることが可能と考えました」

 ご飯、パン、麺、甘味といった糖質を極端に控え、脂肪とタンパク質はたっぷりとる。

「糖質をとらないと元気が出ないのでは」と思いがちだが、糖質を制限すると身体は新たなエネルギー源としてケトン体を作り出す。ケトン体はがん細胞の栄養源にならないので、がん細胞を弱らせ、正常細胞は元気にするという効果が期待できるのだ。

食事で気をつけたのがEPAを積極的にとるということ。イワシやサバなどに多く含まれる栄養素ですが、がん抑制効果が高いといわれています。ビタミンDも同様なのでこちらはサプリでとるようにしました」

 そして夕食時には、ケトン体の生成をサポートするMCTオイルも摂取。無味無臭の油なので紅茶に入れて飲む。血糖値を上昇させない人工甘味料の「パルスイート」を少し加えれば甘さも楽しめ、リラックスできる。

 こうして厳密な食生活に取り組み、3か月後、再び造影CT検査を受けた。