民間療法は絶対近づいちゃダメ
「ここまで怪しげな食事療法や高濃度ビタミンC療法には、がん治療としてはダメ出ししてきました。だとすると、エビデンスの乏しい民間療法にはいっさい近づくなと言っているように思われるかもしれませんが、実はそうでもありません」と大場先生は言う。
健康食品やサプリメント、漢方薬、鍼灸や温泉療法、アーユルヴェーダやヨガなど、あまたある民間療法は、正式には「補完代替医療」と呼ばれ、通常の医療ではほとんど取り入れられていない。
「がんの治療効果をうたうアガリスクなどのキノコ系やプロポリス、漢方などは詐欺的なものがほとんど。ですが、実際のところなんらかの民間療法を黙って行っているがん患者さんはきっと多いはずです。
それらによって患者さんが安心感や救われた思いが得られるならば、エビデンスがないという理由だけで頭ごなしに否定はできません。がん患者さんは1日24時間、常に患者として接してもらえるわけではありませんから、人として何かに頼りたいと思う気持ちは理解してあげたいです」
ただし、妄信してくれぐれもやりすぎや、ひとりで悩み続けることは避けてほしい、とも。
「医療が高度化、細分化するにつれて、医師とのやりとりがドライで冷たいと感じる場面が増えています。一方で、患者さんの弱みにつけ込み、詐欺的医療で金儲けをたくらむ医師、医療機関も後を絶ちません。がんは自分の命、人生に直接、関わってくる病気だからこそ、身近にある情報に対して、それって本当なの? 根拠はなに? と冷静に吟味できるようになってほしい。がんにかかっても自分らしく過ごせる時間や日々を大切にしながら、一日でも長く笑顔でいてほしいと願います」
教えてくれた人は…大場 大先生
東京目白クリニック院長。外科医・腫瘍内科医。医学博士。がん研有明病院、東大病院勤務を経て開業。順天堂大学病院の講師も兼任。
<取材・文/冨田ひろみ>