『Colabo』は少女の孤独と絶望を見つけ出す
背中を丸めて泣いている少女がいた。市販の風邪薬を大量に飲み込み、嘔吐している少女がいた。身を売ること以外の選択肢を知らない少女がいた。強い者だけが生き残る街にあって、弱い者たちの姿は風景の隅に追いやられる。苦痛にうめく声は、繁華街に飛び交う嬌声にかき消される。そうした場所で、コラボは少女の孤独と絶望を見つけ出す。
「声かけチーム」のひとりは、自身もかつては歌舞伎町をさまよい、コラボに行き着いた経験を持っていた。
「以前の自分と同じような女の子が、たくさんいる。そんな子たちとつながりたい」
彼女はそう話しながら、周囲に目をやる。
助けを求めたくても、どこに助けを求めていいのかわからない少女、自分が何に困っているのかすらわからない少女もいるのだ。そうした少女たちを狙う悪質な風俗業者や、未成年と知りつつ、金の力だけで少女を快楽の道具にしようとする男たちの姿も目立つ。
「何が起きても自分が悪いのだとあきらめている。そんな女の子が多い」仁藤さんもそう話す。だからこそ当事者に近い立場にある女性たちが支援の手を差し伸べるのですよね─私がそう応じると、仁藤さんは「うーん」と首を傾げ、そして続けた。
「支援、って言い方、私たちはしていないんですよ。支援しているつもりもないし」
そ、そうなんだ。少しばかりあわてる私の反応を特に気にするふうでもなく、仁藤さんは丁寧に、静かに、訴えた。
「一緒にやっていく。一緒に解決の道を探す。そんな感じかな。支援っていうと、困っている女の子たちの側に問題があるのではと思わせてしまう」
確かに。「支援」はどこか上から目線の物言いだ。「してあげる感」が強い。
「バスカフェも施しの場じゃない。女の子が自由に過ごすための居場所。そう位置づけているんです」
そう、「バスカフェ」は自由な空間だ。窮状を訴える少女の姿もある一方で、無心に弁当を食べている少女の脇で、何時間もスマホをいじっているだけの少女がいる。紙袋いっぱいにコスメやスナック菓子を詰め込んで、何も話すことなく去ってしまう少女もいる。
「それでいいんです」
仁藤さんは笑顔で断言する。その代わり「助けてあげる」とは言わない。
「ごはん、食べてる?」
いつだって、その言葉が入り口だ。
腹を満たせば、また夜の雑踏に消えていく少女たちがほとんどだ。だが、安堵できる場所があることを記憶の片隅に刻印する。
そこが辺境のオアシスのようにも感じた。