親ががんだからうちはがん家系
自分が「がん家系」かを気にする人は少なくありません。当クリニックで内視鏡検査を受ける人のなかにも、がん家系だから検査を希望するという理由はとても多いです。
実はこの「がん家系」は遺伝性がん、あるいは家族性がんを指すのですが、そのようながんは全体の10%未満にすぎません。
親が○○がんになったとか、母方の親類にがんで亡くなった人が多いからといってすぐにがん家系ということではないのです。
一般的にがんという病気は、遺伝子の病気です。家族を一つの単位として見れば、生活環境や食生活は当然似てくるでしょうし、血縁者であれば遺伝子も類似しています。
そのため同じ原因ストレスによって遺伝子が傷つくことが度重なり、そのことが見かけ上、がん家系っぽくなっている場合がほとんどだといえます。
がんは「遺伝子の病気」ですが、それは決して「遺伝する病気」という意味ではないのです。
ただし、割合は小さいものの「がん家系」を疑ったほうがいい場合はあります。例えば、血縁者の中に非常に若くして進行がんを患った人がいたり、ひとりで複数のがんに続けてなる人がいたりする場合です。
「自分は遺伝性のがん家系かもしれない」と不安に思う人は、各地のセンター病院や大学病院などにある「遺伝カウンセリング(相談)外来」でご相談を。
焦げはがんになるから食べない
焼き物の焦げを食べるとがんになる、と聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
確かに、肉や魚のようなタンパク質を多く含む食材を高温で調理すると、特に焦げた部分を中心に「ヘテロサイクリックアミン」と呼ばれる発がん性の化学物質ができることはわかっています。
だから、焦げを食べるとがんになるという説が広まったのでしょう。
ただし、どの程度ヒトのがんの原因になっているのかは科学的には明らかになっていません。米国のある研究では、かなり高温で調理した牛肉を食べている人に胃がんのリスクが高いとする報告があります。
英国でも、過剰な高温調理や直火焼きの肉は避けるようにという指針もあります。
かたや日本国内にも、サンマ、イワシ、アジ、サバ、ウナギなど7種類の焼き魚、焼き鳥、焼き肉などを分析した研究があります。
それによると、高温調理すればやはり高濃度のヘテロサイクリックアミンが検出され、特に焦げが目立つ焼き魚の皮には身よりも2~20倍多く含まれているそうです。
とはいえ現実的に考えれば、私たちは毎日焦げばかりを食べているわけではありません。なるべく減らすよう心がけるくらいでよく、がんのリスクに過剰におびえる必要はないと思います。