介護で後悔しないために
一方、親の希望を聞いても、それが叶えられなければ、後悔になるのではないか。
「距離やお金の問題などで、叶えられないことはあります。でも、親の意思がわかれば、できる範囲でそれに近いことを提案できますし、後悔の軽減になると思います」
例えば、在宅を希望しているけれど、遠距離で自分が対応できない場合、在宅も入所も対応してくれる小規模多機能施設を探すなどが考えられる。
「とはいえ、介護や看取りに完璧はありません。ここまでの話と矛盾してしまうかもしれませんが、親の意思を知って寄り添うことができたとしても、看取りで“後悔なし”というのは、ほぼありえない。やはり、親の死に直面するわけですから。どんな道をたどっても後悔はゼロにはならないものだと心に留めておくことも、看取り後の気持ちを和らげる助けになるはずです」
元気なうちに!これだけは聞いておきたい3つのこと
聞いた内容を介護に関わる全員で共有するのも重要。トラブルなく、全員が同じ方向を向いて介護に携われる。
1. どこで最期を迎えたいか
在宅か施設か。施設ならどのような施設がよいか、できるだけ具体的に
2. 誰に介護をしてもらいたいか
主介護者になってもらいたい人は誰か。ただし、指名された人だけに負担が偏らないように
3. どんな医療を受けたいか
延命治療を受けたいという意思があるか。受けたい場合は、具体的な治療方法も
教えてくれたのは阿久津美栄子さん
介護者を支援するNPO法人「UP TREE」代表。自身の介護経験をもとに「介護者手帳」を作成。介護者の“居場所”づくりにも注力。著書に『家族の介護で今できること。』ほか
<取材・文/河端直子>