その尿トラブル、実はがんの可能性も
二宮先生のクリニックでは、頻尿をきっかけに全身にまつわる病気が発見された実例もある。
「50代以上の女性に多いのは、糖尿病です。高血糖になると、尿と一緒に糖を排出しようとするので、オシッコの量が増えます。尿の中に糖分が混じるようになり、それが膀胱の刺激になって頻尿を助長。
また、糖尿病になると血中の糖により、血管や神経が傷つきます。膀胱に指示を出している神経が傷つくことで頻尿を引き起こしたり、膀胱自体の機能が落ちることもあるんです」
糖尿病はさまざまな合併症を引き起こし、悪化すると失明や慢性腎臓病のおそれもある。そのサインのひとつが尿トラブルなのだ。
「糖尿病は目立った症状がありません。女性の場合、お勤めしていなければ定期的な健康診断を受けていないケースも多く、更年期以降は気づかず悪化している方も多いです。尿トラブルのサインを見逃さないでほしいですね」
夜に何度もトイレに行く「夜間頻尿」は、高血圧が潜んでいることも。
「高血圧の患者さんは、夜になると血管の外の不要な水や塩分を回収して排出しようとします。また、血圧を下げようとするホルモンが夜に放出され、それが利尿ホルモンと似た働きをします。そのため、頻尿が起こります」
このほか老廃物を尿として排せつする腎臓の働きが悪くなると、血液や尿の中に異物が増え、膀胱を刺激。尿量が増えて頻尿になることがある。頻尿は、腎臓機能の低下のサインでもあるのだ。
もっと恐ろしいのは、排尿トラブルの原因が実はがんであるケース。
「子宮がんや大腸がんの場合、臓器ががんによって侵食されると、臓器が硬くなって変形し、臓器同士のバランスが悪くなっていく。
その結果、尿路がしなやかに動けなくなり、常に刺激されるようになるなどの事態が起き、頻尿につながるんです。また、白血病で頻尿症状が出ることもあります」
ほかにもアルツハイマーなどの脳疾患が排尿トラブルを引き起こすこともある。
「排尿はさまざまなホルモンや神経が関わっていますから、脳疾患からの影響が出ることは多い。例えばオシッコを出さないように働きかける『抗利尿ホルモン』が、脳疾患によって出なくなることがあります。
そうすると飲んでいる量以上に水が出てしまい、脱水症状を起こし、意識を失ってしまうことも」