6月5日、一般社団法人日本経済団体連合会は「男性の家事・育児」に関するアンケート調査結果を公表。2022年の男性の育児休業取得率は47.5%で、前年の29.3%から大幅に上昇したことが明らかになった。
一方、女性の育児休業取得率は過去5年間、90%以上で推移。2020年以降はいずれも95%を超え、2022年は96.4%となった。育休取得率上昇の背景としては、2022年4月に個別周知・意向確認が義務化されたことや、10月から「産後パパ育休」が創設されたこと、育児休業の分割取得が可能となったことなどが要因と考えられている。
男性の育休取得は少子化対策としても喫緊の課題だ。政府は6月13日に「異次元の少子化対策」の具体的な中身を示す「こども未来戦略方針」を正式決定。児童手当の拡充などとともに「共働き・共育ての推進」を盛り込み、2030年には85%の男性が育休を取得することを目標に定めた。
このように、子育てを取り巻く環境は大きく変わろうとしている一方、家事・育児は女性の仕事だという無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)もいまだ根強く、子育てにおける男女格差は令和になってもなお、社会の根底に潜んでいるようだ。
そこで今回は、全国の20〜40代のママ500人にアンケートを実施。家事・育児にまつわる男性の参加状況や、子育てに対する不満について寄せられた声を、株式会社子育て支援の代表取締役・熊野英一さんと見ていきたい。
夫は外、妻は家庭、分業スタイルも存在
まず『夫婦の家事・育児の負担割合』について尋ねた。家事・育児の6割以上を女性が担っているという家庭は全体の88%にも上る。その内訳を女性側の就業状況別に見ると、専業主婦が49%、パートタイムでの就業が29%、フルタイムでの就業が17%となっており、共働き世帯においても女性の家事・育児負担率が高くなっている傾向が明らかになった。
「実際に、子育て中の家庭における夫婦の家事・育児の負担は二極化している傾向があります。男性は外で稼いで、女性は家事・育児に専念するという完全分業スタイルの家庭も依然として多いです。一方で50:50とまではいかずとも、共働きで夫婦共に家事・育児を分担してやっている家庭も増えています。
ただ、いずれにしても家事・育児の負担が女性のほうに偏りがちになっていることは間違いなく、家のことは女性がやるものという意識が、日本の文化として根強く残っていることの表れだと感じますね」(熊野さん)
次に『夫の育児参加についての不満』を尋ねたところ、意外にも36%以上の人が「不満はない」と回答。ところがその内実を見ると、「家事も子育てもできる限り一生懸命やろうとしてくれていて、頼もしい」(29歳・専業主婦・愛知県)という肯定的な声もある一方、「収入面で平等ではないから、家事・育児で私の負担が多いのは仕方ないと諦めている」(32歳・パート・東京都)、「普段何もしないのが当たり前になっていて、たまの休日に少し手伝ってくれるだけでも十分ありがたく感じる」(38歳・会社員・京都府)と、「そういうものだ」という諦めの声も少なくない。
「家庭のことはなんとなく女性がすべきだという文化を女性側も無意識に受け入れてしまっているのかもしれません。多少の不満はあっても、夫は外で稼いできて、自分は専業主婦もしくはパートぐらいの補助的な稼ぎで家の仕事をメインにやるという役割分担で成り立っている家庭はやはり多いです。重要なのは、それをきちんと夫婦で話し合い、お互いに合意しているかだと思います」(熊野さん)