夫の勝手を許さず妻も自己主張を!

「それはまさにウチの夫!」と思い当たったら、妻はどうすればいいのだろうか。

「やはり、ひどい自分勝手は許さず、妻も夫に言うべきことは主張できる関係を築くことが大切でしょう。そういう夫は、得てして大きな組織で、それなりの地位にあった人も多い。おそらく妻だけでなく、まわりも傍若無人を放置してきたのでしょうね。でも、このタイプは意外に、反論されると弱いところもある。あきらめず、話をしてみることが大事でしょう」

 でも、「いまさら夫に意見などできない」という妻も多いだろう。その場合は、息子や娘に代弁してもらっても。先生の経験では、夫には娘、妻には息子など、異性の子どもが働きかけたほうが、うまくいくことが多いという。

 先生は「本来は夫婦が対等な関係を築くには、30代、40代から心がけるべき」だが、「50代、60代でも子どもの独立や、夫の定年退職などの節目を機に家事を分担するなどして、夫婦関係を見直すといい」とアドバイスする。

夫と距離を保ちお互いに自立を

 では、もし夫に何を言っても変わらないようなら?

「なるべく夫といる時間を少なくしてストレスを減らすこと。妻自身も意識して自分の時間をつくることも大切です」

 妻も主体的に自分の趣味を持ったり、友人と旅行に出かけたりするとよい。「夫の世話があるから旅行できない」などという思い込みは危険だ。

 妻も好きなことをして、扁桃核が楽しい感情で刺激され、海馬もよい記憶で満たされれば、脳の老化を遅らせることができるというわけだ。

 先生は「“俺様夫”の問題は、自分の楽しみは二の次に夫に従属してきた妻が招いていることも」と注意を促す。

「夫婦で依存し合わず、独立した存在として尊重することが第一。外来にみえるある90代のご夫婦は、認知症にもならずお元気。秘訣をお聞きすると、“ウチの夫婦は、自分は自分、あんたはあんただから”とのこと。名言ですね」

教えてくれたのは長谷川嘉哉(よしや)先生

認知症専門医。祖父が認知症であった経験から、2000年に認知症専門外来、土岐内科クリニックを岐阜県土岐市に開業。患者家族の立場に立った医療を志し、YouTube「ボケ日和 転ばぬ先の知恵」でも情報を発信。著書『ボケ日和―わが家に認知症がやって来た!どうする?どうなる?』(かんき出版)も好評。

<取材・文/志賀桂子>