一度に24枚の書類と格闘するハメに…

 諸手続きもできなくなっていた4人のために、こかじさんは役所へ銀行へと奔走。地域包括支援センターに連絡し、4人分の介護保険申請をすると、足腰が弱っていた両親は要介護1、叔父は要支援1(後に要介護1に)、叔母は要支援2になった。

 預貯金や保険など金銭管理のフォローも急務だったが、それも一筋縄ではいかない。

「叔母を連れて信用金庫に行くと、総合口座以外に、小口定期が8口あることが判明。今後の生活費に充てるために普通預金にまとめる必要がありました。

 通帳の紛失届、再発行届、総合口座への入金と、必要書類は1口につき3枚×8口分で計24枚。氏名のみ本人が直筆すれば他は私の代筆でよいとのことで、住所やら電話番号やらを24枚分書きました」

 さらに叔父の家屋には、叔父の両親の荷物も大量に残っていた。

「これだけの荷物をいずれ処分するのは姪である私。その手間と費用に気が遠くなります」

介護保険は利用のたびに保証人のサインや押印が必要。「今まで100通はサインしました」(こかじさん)
介護保険は利用のたびに保証人のサインや押印が必要。「今まで100通はサインしました」(こかじさん)
【写真】認知症の影響で荒れた家、冷蔵庫の中には大量の「練りわさび」の小袋

在宅でも施設でも最終的にはカネ次第

 高齢者4人の経済状況を把握しても、本格的な問題はそこからだった。

「いったい親自身の年金と財産で今後の親の生活を支えきれるのか……。子どもなら、年齢とともにできることが増えて自立してくれる。

 でも介護はその逆で、終わりも見えなければ、できないことが増えていく。金銭的にも追い詰められて、お先真っ暗という感情ですね」

 介護サービスの利用には介護保険が使えるが、利用するほど負担額は増加。老人ホームも、介護保険利用で安価に入れる特別養護老人ホームは待機者が多く狭き門だ。こかじさんが住む市内でも100~150人待ちだという。

 私営の老人ホームは居住費に食費や諸経費を加えると月額20万円ほどはかかる。年金でまかなえればよいが、不足分は親の貯金を取り崩すか、子が負担せざるを得ない。

「もし両親ともに有料老人ホームに入ろうものなら、月額20万円×2人で月々40万円の出費ですよ。私も還暦を過ぎ、自分の老後資金だって不安なのに。介護を始めて4年目ですが、介護破産する前に“とっとと逝って”と、毎日のように思っています」