警戒レベル3は避難開始の合図

 災害発生時に命の分かれ目となりやすいのが避難するタイミング。

「自治体から発令される避難情報には5段階の警戒レベルがあり、一般の人は警戒レベル4の“避難指示”で避難を開始します。一方、高齢者・障害者とその支援者向けに発令されるのが、警戒レベル3の“高齢者避難”。

 レベル3を避難準備と勘違いしている人は案外多いため、移動に時間のかかる人が避難を始めるタイミングであることを知ってほしいと思います」

 台風や水害などでは、避難情報が出る前に自主的に移動するのも賢明な選択。

「テレビやラジオの気象情報をチェックすれば、災害の規模や発生する時間帯はある程度わかります。暴風雨の中、避難するのは難しいですから、悪天候になる前に介護施設や遠くの親戚宅、宿泊施設などに移動できればいいですね」

 避難先で起こりがちなトラブルも知っておきたい。

「認知症の人は状況が理解できず、避難所から家に戻ろうとすることがあります。名前と連絡先がわかるものを身につけてもらっておくことは普段からされていると思いますが、避難所の責任者や周囲の人に『認知症なので、1人で歩いていたら教えてください』などと協力を求めておくといいでしょう」

 東日本大震災高齢者などが多数犠牲になった教訓を踏まえて、支援が必要な人の避難のバーチャル体験ができる施設も誕生している。

「例えば東京都品川区にある“しながわ防災体験館”は、避難行動要支援者のケアを考える非常に珍しい防災館。車いすで悪路を通る体験などができるので、お近くの人は防災対策を考えるきっかけとして足を運んでみては」

ケアマネジャーや、近隣の人たちとは普段からコミュニケーションを取っておく ※写真はイメージです
ケアマネジャーや、近隣の人たちとは普段からコミュニケーションを取っておく ※写真はイメージです
【写真】2011年3月11日の「東日本大震災」が起こった当初の被災地の様子

介護家族のいる家庭で気をつけたいこと
□自治体が作成しているハザードマップなどをチェック
□自宅から避難所へのルートを下見しておく
避難所のトイレやバリアフリーの情報を収集
避難行動要支援者名簿に登録しておく
□日常生活に必要なものと健康管理に必要なものを整理
□近隣の人とコミュニケーションを築いておく
□一般の人より早い警戒レベルで避難を開始する
避難所では認知症の人がいる場合、責任者や周囲に伝えておく

冨樫正義●防災介助士インストラクター。サービス介助士、防災介助士、認知症介助士などを認定・運営する団体「公益財団法人日本ケアフィット共育機構」のインストラクターとして、年間50社以上の企業対象研修を担当

取材・文/中西美紀