10年生存率98.7%【前立腺がん】
国立がん研究センターが全国240の病院の約24万件のデータを調べたところ、前立腺がんの人の10年生存率はなんと、98.7%。
しかも、ほかの臓器に広がっているステージ4を除くステージ1、ステージ2、ステージ3はすべて生存率100%だった。
つまり、比較的早めに見つけた場合、前立腺がんで亡くなる人は10年たってもひとりもいなかったということ。
「多くの前立腺がんは進行がゆっくりで、治療の選択肢も多く、治りやすいがんといっていいと思います」
と言うのは、日本大学の高橋悟先生。
前立腺というのは男性特有の生殖器官。膀胱(ぼうこう)のすぐ下にあり、膀胱から続いている尿道の周りを囲んでいて、精液の成分をつくるなどの働きをしている。
前立腺がんは50代から増え、高齢になるほど多くなる。最新のデータでは、日本で前立腺がんを発症した男性は年間約9万5000人で、男性がかかるがんの第1位だ。
患者数が増えたのは社会の高齢化などいくつかの要因があるが、検査の普及や検査機器の進歩などにより、小さな前立腺がんも検知できるようになったため、発見される人が増えたことも一因と考えられている。
「前立腺がんは進行が遅いため約2割はすぐには治療の必要がありません。そのため“診断=治療”というわけではなく、検査をして進行していなければ、経過観察だけをする『監視療法』という選択肢もあります」(高橋先生、以下同)
前立腺がんが進むと頻尿や尿が出にくいなどの症状が出るが、そこまでいくとかなり進行している場合が多い。
「早期発見のためには『PSA検査』という採血だけで済む検査が有効です。無料で行っている自治体も多いので、50歳以上の男性はぜひ受けてみてください」
また、遺伝的な要因も指摘されているため、父親や兄弟に前立腺がんを発症した人がいる場合は、40代でも受けることを検討してほしい。
取材・文/長島 渉(メディカルライター)