目次
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ー 10か国にルーツを持つ住民がいるいちょう団地
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ー 『いちょう団地に国境はありません』
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ー 『日本語ワカリマセン』『会長は外国かぶれ』

 新宿から約50分。小田急電鉄江ノ島線の高座渋谷駅から10分ほど歩くと、全1400世帯のうち20%ほどが外国にルーツを持つ居住者が占める「いちょう団地」がある。現在、この団地を取りまとめているのは、いちょう下和田団地連合自治会会長の遠藤武男さんだ。来年で会長職を辞する予定だが、住民の要望に対応し、県に陳情書を提出するなど82歳になった今なお忙しい日々だという。芝の緑が眩しい敷地内を歩くと、6か国語で書かれたゴミ出しルールなどの看板が目についた。

10か国にルーツを持つ住民がいるいちょう団地

「現在、いちょう団地には10か国にルーツを持つ住民が住んでいます。多いのは、ベトナム、中国。ペルーやボリビアなど南米系の方も増えましたね」

 穏やかに語る遠藤さんがいちょう団地に入居したのは、1973年。2年後、団地内でできた友人に「一緒にやろう」と誘われて自治会に入った。

「首を突っ込んだのが32歳。今、私が82歳ですから、50年になりますか。途中で辞められなくなっちゃっただけで、いろんなことがありました」

 いちょう団地に外国人が増えた理由はこうだ。1980年、神奈川県大和市に定住促進センターが設置(1998年まで)され、ベトナム、ラオス、カンボジアの難民に定住支援が行われたこと。その後もNPOなどによる支援が継続していることや、国際交流の拠点として、1994年に財団法人大和市国際化協会が設置されたことなどが大きい。

「2005年に連合自治会会長に就任したとき、福祉協議委員の方から『外国籍の方のことを学んでみませんか?』とお誘いいただき、神奈川県下の他の団地に見学や研修に行きました。ちょうど、いちょう団地でもベトナム、ラオス、カンボジアの方が増えてきたので、何か彼らのためにできることはないかと民生委員の方と一緒に考えまして」

 始まりはスポーツを通じた交流だった。いちょう団地にベトナムのサッカーチームがあり、在日ベトナム人によるサッカーの全国大会にグラウンドを貸した。全国からバスでいちょう団地にサッカー選手が集結。大会は盛り上がり、いちょう団地のチームが優勝した。

「祝勝会の会場に集会所をお貸ししたことがきっかけで、みなさんと仲良くなりました。スポーツでの交流がうまくいったから次は食文化だということで、地元の中学校の調理室をお借りして、中国人と日本人で本場の水餃子を作ったんです。『こんなにおいしいんだ!』って、みんな喜んでね。