ディスカッションでは真剣な議論が交わされ、多様な意見が出た
ディスカッションでは真剣な議論が交わされ、多様な意見が出た
【写真】実際にナプキンに触れ畳んだりする男子学生たち

 続いて、ディスカッションのコーナーへ。高橋氏から「経血が服からにじみ出ている女性を街で見かけたら、どう対応すべきか」という問いが投げかけられると、各テーブルで真剣な議論が交わされた。

月経不調による労働損失は4900億円を超える

「異性から声をかけられるのを嫌がる人もいる。近くにいる女性に事情を話して、助けてもらう」「電車で隣り合わせた人がそうなった場合は、手伝えることがあるか聞いて、必要なら一緒に降りる」など、相手を慮おもんぱかる意見が多くあがった。

 休憩を挟んで後半は、「生理と社会」について。近年注目されている「生理と貧困」の問題や、月経不調による労働損失が4900億円を超えるという事実、さらに生理用品の税率問題といった、社会的課題についての講義が行われた。

 すべての講義が終了すると、代表の生徒から高橋氏へ感謝の言葉が述べられた。

生理は個人の悩みに捉えられがちですが、それが社会全体の課題になることがわかりました。われわれ男子校生は、生理に接する機会が極端に少ないので、今回のセミナーは大変有意義な時間でした」

 こうして2時間のセミナーは幕を閉じた

 セミナーを主催した高橋氏によると、生理を取り巻く環境は、「この数年間で驚くほど変わった」という。

「4年前、生理に関する特集を組んでもらうため、テレビ局に企画書を出したことがありました。ところが局から『地上波で生理を扱うのは無理です』と言われたんです」

 結局、2つのテレビ局からNGを突きつけられ、企画は立ち消えに。企画を後押ししてくれた女性プロデューサーからは「私たちメディアから社会を変えていかなければならないのに、すみません」と謝られた。

 しかし、百貨店の催事などで地道に生理セミナーを続け、2022年に本郷学園で1回目の生理セミナーを開催。すると、NHKをはじめ、3つのテレビ局が取材に訪れ、その様子が地上波で放送された。

 2年の間で、メディアが生理を取り扱うようになっていた。その背景には、コロナ禍で浮き彫りになった「生理の貧困」が関係していると高橋氏は分析する。

「経済的な理由と生理に関する知識がないことで生理用品を購入することが難しい『生理の貧困』と呼ばれる問題が、に社会的な問題であることが認知され、世の中全体が、生理から目をそらすことができなくなったのだと思います」

 テレビで放送されたことで、男子校での生理セミナーは大きな反響を得た。同時に女性たちから、「自分たちの時代では、あり得なかった」という驚きの声が高橋氏の元に届いた。

「私もそうですが、かつて小学校で生理を学ぶ際は、女の子が別室に集められ、こっそり話を聞くのが普通でした。その結果、男子生徒は生理に対して“触れてはいけないもの”と思わされていたのです」

 この慣習が、生理の理解を遅らせる要因となる。実際に、男性が生理を知らないことによる問題は、たびたび発生する。