「5年前に孫の浩之(ひろゆき)に誘われてTikTokを始めたけど、こんなに有名になるなんて思わなかったさぁ(笑)。本土から来た人に“TikTokのおばーだ!”と声をかけられることも増えたよ」
そう話すのは、TikTokとYouTubeで計50万人以上のフォロワー(2024年7月時点)を持つ大田吉子さん(90)。
「南の島のおばーと孫」というアカウント名で、孫の浩之さんが撮影した日常の動画を配信し、「笑顔がかわいい」「元気をもらえる」と大人気。今年5月には、初の書籍『90歳のおばーのゴキゲンなひとり暮らし』を上梓した。
「私は人を笑わせたり、よろこばすのが大好きさぁ。人生の目標は、世界中のみんなに笑顔で一日を過ごしてもらうこと!」(大田吉子さん、以下同)
誘われたらやる恩師の教え
生まれてから現在まで沖縄本島最北端の国頭村(くにがみそん)に暮らす吉子さんは、高校卒業後にバスガイドや米軍基地のラジオ局の電話交換手を務め、22歳で結婚してからは夫とアイスキャンディー店や鮮魚店、民泊業などを営んできた。
「『私でよければなんでもやるよ』が口癖なもんだから。人からすすめられたことは断らずに、仕事のほかにも地域の防火クラブや民生委員などをやってきたよ」
その源にあるのは、小学校の恩師の言葉。
「私は泣き虫で引っ込み思案だったからさ、いじめられていて、かわいそうに思った担任の女の先生が一緒に登校してくれてね。先生に“もっと積極的になって、自分のできることは何でもしたほうがいいよ”と教えられてやってみたら、だんだんいじめられなくなったのよ」
先生の教えは人生の宝物に。大人になってからも守り続けていると仕事や出会いが舞い込み、世界が広がった。
お見合いで結婚した5歳上の孝全(こうぜん)さんは、本業の大工の傍らさまざまな商売を営んでいたアイデアマン。夫と二人三脚で仕事に励み、5人の息子を大学や専門学校まで行かせた。
「本当は看護師になりたかったけど、貧しかったからさ学校に行けなくて。息子たちは学力をつけて自分のやりたいことをやってほしい、その一心で必死に働いたさぁ」