がん診療連携拠点病院は全国すべての県に2、3か所は必ず設定されているので、地元で治療を受けられるというメリットも大きい。評判の医者にかかろうとすると、数か月待たされることもあり、そこでがんが進行してしまうことも考えられる。何よりがんは手術で取り除いたら終わりというものではありません。

 再発を防ぐための抗がん剤治療や放射線治療など術後治療で数年病院に通うこともある。また再発の可能性がある病気という意味でも、通いやすさは重要です。わざわざ大都市に行ったりしなくても、地元の病院なら治療しながら仕事もできるし、子育てもできる。がんと共存しながら自分らしく生きていけるでしょう」

 病院選びでもう一つのポイントが、「腫瘍内科医」がいる病院を選ぶこと。腫瘍内科医は日本では「がん薬物療法専門医」とも呼ばれる抗がん剤治療のエキスパートで、がんの診断から治療まで、がん専門医として総合的なマネージメントを担う。

「ただ日本ではまだ腫瘍内科医が少ないのが現状で、がん診療連携拠点病院であっても、腫瘍内科医がいないところもあります。腫瘍内科医を探すなら「日本臨床腫瘍学会」のウェブサイトにがん薬物療法専門医として名前が掲載されているので確認してください」

セカンドオピニオンをためらわずに求める

 がんのステージや年齢、患者の意思や背景など、がんは一人ひとりの病状に合わせて治療法が異なり、その過程でいくつもの選択肢が突きつけられる。だが主治医に提案された治療法が本当にベストなのか悩んでも、素人には判断が難しい。他の医師の意見も聞きたいけれど、主治医に切り出すのは気が引けて─、ということもあるだろう。

勝俣範之先生●日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授、部長、外来化学療法室室長。国立がんセンター医長を経て、2011年より現職。あらゆる部位のがんを診られる「腫瘍内科」の立ち上げは、当時の日本では画期的であった。国内における臨床試験と抗がん剤治療のパイオニアの一人。
勝俣範之先生●日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授、部長、外来化学療法室室長。国立がんセンター医長を経て、2011年より現職。あらゆる部位のがんを診られる「腫瘍内科」の立ち上げは、当時の日本では画期的であった。国内における臨床試験と抗がん剤治療のパイオニアの一人。
【写真】年齢層別のがん罹患率のグラフ

「そんなときはためらわず、セカンドオピニオンを求めることがおすすめ。今はセカンドオピニオンを受けたいと言われたら、医師は拒否しないのが一般的」と勝俣先生。

 ただし、まずは現在診察を受けている主治医の話をしっかり聞くことが大前提。

「セカンドオピニオンを受けても、自分の病状を説明できない人がいます。がんと言われただけで頭が真っ白になり、ファーストオピニオンである主治医の話をきちんと聞いていないんです。自分がどこのがんなのか、がんのステージすらわかっていなかったりもする。今の治療方針が合っているかどうか、主治医の意見を確認するのがセカンドオピニオンです」

 セカンドオピニオンの病院を決めたら、主治医にもらった紹介状や検査結果を持って、セカンドオピニオンの医師の診断を仰ぐ。

 セカンドオピニオンを受ける医師は、ファーストオピニオンの医師と同等かそれ以上の専門性を持つ医師が望ましく、がん診療連携拠点病院や、がん治療で実績がある病院を基準に決定を。セカンドオピニオンは健康保険が利かず、自費診療で3万〜5万円が相場とされている。