腹七〜八分目で3食の規則正しい食事
最後は、老ける度合いを左右するもうひとつの要素、食習慣について見ていこう。
「腹八分目に医者いらず」ということわざのとおり、適度な量の食事は健康な身体をつくる基本。アンチエイジングの究極目標は健康長寿といえるが、この食習慣には科学的な根拠がある。
「アカゲザルを20年間哺育して行った実験です。一方のサルには十分な食事を与え、もう一方のサルにはその7割、腹七分目の食事を与えて観察を続けました。結果、腹七分目のサルのほうが、食事制限なしのサルよりも毛がふさふさで、若々しい身体を保っていたのです」
また、近年は空腹の時間を確保するほうが健康にいいという考え方も生まれている。
「空腹時には細胞の再生能力を高める『オートファジー』というシステムが働きます。そのシステムによって老化を抑えられるのです」
朝昼夜の3食を規則正しくとる食習慣も健康維持に欠かせず、理にかなった理由がある。
「成長ホルモンが関係しています。若々しく健康な身体を保つには、加齢とともに低下する成長ホルモンの分泌を促さなければなりません。成長ホルモンは深い睡眠(ノンレム睡眠)のときに出ることがわかっていて、そのカギは朝昼夜の規則正しい食事のとり方にある。
加えて、夕食は起床後12~14時間以内に終え、就寝3時間前は何も食べないようにする。そうすることで成長ホルモンの分泌を高め、老けない身体をつくり出します」
そして、主食・主菜・副菜の組み合わせで、栄養素を持つ食材をバランスよくとる食習慣も大切。身体に必要な栄養素は約50種類、相互作用によって健康が保たれるそうだ。
「私は1日10品目とることを推奨し、その頭文字をとった『かきくけこ・やまにさち』を合言葉として皆さんにお伝えしています。参考にして10品目を心がけましょう」
加齢とともに身体が衰えていくのは避けられない。そこであきらめるのではなく、食のあり方を自らに問い、前を向く必要がある。
「自分の食生活、食習慣はこのままで本当にいいのか。一度見つめ直してみることをおすすめします。食の改善はいつから始めてもよく、遅すぎることはない。人生100年時代だからこそ、きっと差がつくと思いますよ」
老けないための食習慣3つのルール
・腹七~八分目を心がける。早食い、大食いはNG
・朝昼夜の3食をきちんととり、決まった時間に食べる
・主食・主菜・副菜の組み合わせで、栄養素をバランスよく
お話を伺ったのは……森 由香子さん●管理栄養士。日本抗加齢医学会指導士。東京農業大学農学部栄養学科卒業。「食事からのアンチエイジング」をテーマに栄養・食事指導を行っている。医療機関をはじめ幅広い分野で活動中。著書多数。
取材・文/百瀬康司