30代後半、重野さんは大腸がんにかかった。吐き気や下血などの不調で内科に駆け込むが病巣を見つけられず、腰痛で通っていたカイロプラクティックの先生に異変を指摘されたという。大手術から腸閉塞など、さまざまな困難を経て寛解となってから取り組んだ「二度とがんにならない腸活、そして食生活」。日々実践していることをくまなく伺った。
「ある日、突然の“下血”に見舞われたんです。大量の血がドバッと出て、これは何かおかしいと思いました」
よくある体調不良かなと思った
そう話すのは、24年前の38歳のときに大腸がんになった料理研究家の重野佐和子さん。すぐにかかりつけの内科を受診するも、痔ではないかとの見立てでしばらく様子を見ることに。その後、下血はなかったが、当時悩んでいた腰痛の改善で通っていたカイロプラクティックの先生に“普通ではない”とその場で大腸肛門科の検査予約を促された。
「内科で診てもらっていたし、いいほうに考えたい気持ちもあって自分では大丈夫かなって思っていたんです。このときに背中を押してもらわなければ、検査には行かなかったかもしれません」
検査では、下部内視鏡で直腸からS字結腸まで観察。
「モニターで腸の内部を見ながら検査を受けたんですけど、中が真っ赤なんです。なんで赤いんだろうと思っていたら“出血です”と。さらに、うちではこれ以上の検査ができないので、大学病院を紹介すると言われて、ショックのあまり失神してしまいました」
そのときの医師の表情から“これはがんだな”とうっすら覚悟したという重野さん。後にして思えば、前兆のようなものがいくつかあったと語る。
「緊張すると下痢をしやすいタイプで、よくガスがたまってお腹が張ってカチカチになることや、お腹が異常に冷えた感覚のときがあって。時にはひどい吐き気もあったのですが、胃が悪いのかなと思ったり、休んだり薬を飲めば治るので、疲れかなと思っていました」
先に挙げた腰痛も、そのころがいちばんひどかったそう。
「骨盤ではなく胃の下の裏側あたりに痛みがあって、それをほぐしてもらうためにカイロに通っていたんですね。当時はまだ30代ですし、それらの症状ががんとは結びつきませんでした」
“がんから生き抜きたい”という強い思いから、治療先はがん専門の病院を希望。詳しい検査の末、そこですぐに手術が決まった。がんの進行度は今でいうステージ3。腹部を20数センチ開腹する大がかりな手術で、直腸の病巣を切除した。その後の病理検査でリンパ節への転移があることを知るが、抗がん剤治療の選択はしなかったという。
「一つには、当時はまだ効果が明らかではなくて。ぜったい助かるんだったらいいけど、明らかじゃないことはやりたくないなって。副作用で口内炎ができることや吐き気の可能性があることもネックでした。美味しいものも食べられないし、食が大変になることはやりたくなかったんです」