生まれながらの自分に違和感を感じて戸籍を変更し、性別適合手術も受け、シングルマザーのちさとさんと結婚したのが元女性の久良良さん。双方ともさまざまな苦労があったものの、同じような悩みを抱える人や、生きづらさを感じている人たちに寄り添うようなSNSを発信している2人の笑顔の秘訣とは―。
『3年B組金八先生』を見てひとつの答えにたどりつく
滋賀県でハウスクリーニング「にっこりピカリン」を営む谷藤さんご夫妻。夫の谷藤久良良(くらら)さんは、隅々までキレイにする丁寧な清掃技術に定評があり、妻のちさとさんは広報を担当。
彼の仕事の様子をSNSに投稿し、個人アカウントでは娘の楓花(ふうか)さんを交えて仲むつまじい家族の日常を発信している。
一見、ごく普通の仲良し家族に思える谷藤ファミリーだが、一家の大黒柱である“くらさん”こと久良良さんは、元女性! 身体的な性別と心の性が一致しない、トランスジェンダーの女性だった。
「僕は43歳のときに、性別を女性から男性に変えました。血のつながった兄もいますが、戸籍の性別を変えると僕も“長男”になるそうです。おもしろいですよね」(くらさん)
彼が自身の生まれついての性別に違和感を抱いたのは、幼稚園児のころだった。
「当時は女の子たちとのお人形遊びに興味が持てなくて、男の子と遊ぶほうが楽しかったんです。母にスカートをすすめられても絶対にはきませんでしたが、卒園式で叔母が買ってくれたワンピースをどうしても着なければならず、すごく嫌だったことを覚えています。性別について深く考えないような年頃から、女の子らしいものに抵抗感を覚えるなんて不思議ですよね」
小学生のころには同じクラスの女子に恋をするも、その思いは胸に秘め続けた。思春期には身体が女性になっていく現実と向き合えず、バスケットボールに熱中したという。
長年、自らの性別に疑問と不安を抱えていたくらさんが、ひとつの「答え」にたどり着いたのは、30歳のとき。
「有名な学園ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系、第6シーズン、2001年)で、“性同一性障害”に悩む中学生を上戸彩さんが演じていて、ドラマを見たときに『これだ! ようやくわかった!』と叫んだのを覚えています。自分の違和感に名前があるのも知らなかったし、同じ悩みを抱えている人がほかにもいるとわかり、ホッとしました」