目次
Page 1
ー 全身の毛が抜け自ら命を絶とうと…
Page 2
ー 「髪がない」はかわいそうではない
Page 3
ー ありのままの発信が誰かの救いになれば

 

 SNSで、全身の毛が抜け落ちる全身脱毛症であることを公表し、自分と同じ「ヘアロス」の人に向けてウィッグやメイクに関する動画を発信する葉月さん。発症した時は自ら命を絶とうとするほど思い詰めていたが、奮起して就職。脱毛症の自分を受け入れながら、結婚、出産を経てポジティブな発信を続けている。そんな葉月さんの復活ストーリーを教えてもらった。

全身の毛が抜け自ら命を絶とうと…

すっぴんの状態から、リアルな眉毛を描く動画は、YouTubeショートで257万回も再生された
すっぴんの状態から、リアルな眉毛を描く動画は、YouTubeショートで257万回も再生された

「厳しい両親に育てられ、幼少期から自分に自信が持てず10代から過食症に苦しんでいました。19歳でニューヨークの大学に留学しましたが、在学中にうつ病を発症。休学して帰国するも過食症とうつ病は悪化し、4年間実家にひきこもっていました。そんな中、ソファに寝転がってふと頭を触ると頭皮にツルッとした感触があって。母親に見てもらうと十円ハゲが見つかったんです。26歳の時でした」

 近所の皮膚科クリニックで診てもらうと、円形脱毛症と診断され、塗り薬と飲み薬を処方されたが脱毛は止まらなかった。

「十円玉大だったハゲが五百円玉大になり、数も増え、つながっていって……。お風呂で髪を洗うと毛が束になって抜けるんです。それが本当につらくて耐え切れず、ある時思い切って残った髪をすべて剃りました。人生で一番悲しい瞬間で涙が止まらなかったです」(葉月さん、以下同)

 3か月後には頭髪だけでなく、眉毛やまつげなど全身の毛が抜け落ちた。

「通院していた皮膚科で、うちではもう無理だからと市内の大学病院を紹介されました。円形脱毛症にはいくつか種類があって、私の場合は円形の脱毛部が1か所ある単発型から徐々に悪化して、全身の毛が抜けてしまう汎発性脱毛症(全身脱毛症)になってしまった。円形脱毛症は自己免疫疾患の一種ですが、正確な原因は不明で、治療も簡単ではなく長期間に及びます」

 転院先で患部に液体窒素を塗布する治療や、紫外線を照射する治療を受けたが、うつで外出がつらく数回しか通えなかったのもあってか、回復は見込めなかった。

 うつ病と過食症の症状も残るなか、全身の毛を失ったことで自殺を図ったことも。

「つらすぎて当時の記憶は曖昧なんです。ただ、どん底の中でずっと惨めな自分のままでいるのは嫌だ!と強く思って。底まで落ちたらあとは這い上がるしかないんですよね。それから奮起し、就活を開始。ひきこもり生活でビーズアクセサリーを手作りしていた経験が生きてか、数か月後にはジュエリー会社に就職できました」