ありのままの発信が誰かの救いになれば

 30代に入るとうつ病や過食症も少しずつよくなり、38歳で結婚。翌年には男の子を出産した。

「夫には3回目のデートで脱毛症のことを話しました。『そんなこと心配しなくていいよ』って、すぐに次のデートにも誘ってくれて。過去にも男性に打ち明けたことはありましたが、夫のように受け入れて安心させてくれた人はいなかったです」

 出産を機にパートに転職し、これから何を目指そうかと考えていた時にSNSでの発信を思いつく。

「20年近く脱毛症とともに生きてきて、自分なりに習得してきたメイクやウィッグの情報をヘアロスで困っている人に届けたら役に立てるかもしれないと思いたって。2020年にインスタグラムのアカウントを開設しました」

 その中で自分も有益な情報をたくさんもらえると気づき、多くの人に還元したいと思うようになったそう。

「今では数千円で買える可愛いウィッグや、自然な金髪やカラーのウィッグもあると知って驚いて。それに、『眉毛の描き方が上手すぎる』など、ポジティブなコメントもたくさんもらって自信につながりました。眉毛シールやウィッグは、私らしいおしゃれを後押ししてくれる、かけがえのない相棒です」

 それからはYouTubeや、ヘアロスの人に向けたポータルサイトも開設し、積極的に発信を続けている。

「抗がん剤の副作用で起こる脱毛など、誰にでもヘアロスになる可能性はある。それでも人生は楽しめるし、おしゃれもできるんだということを、これからもSNSを通じて伝えていきたいです」

<取材・文/井上真規子>