鉄のとりすぎもNG、基本は食事で摂取

 そこで大事になるのが定期的な健康診断での血液検査だ。チェックするのはヘモグロビンの数値。成人女性では11.0~15g/dl、成人男性では12.5~16g/dlが基準値とされており、それを下回ると貧血と診断される。

「基準値が男女で差があるのは、女性の場合、月経や妊娠、出産が考慮されるからです。そのため男性で11g/dlぐらいだと何らかの病気が疑われることも。また病気で子宮を取ってしまった女性や、閉経した女性では、男性と同じ基準値で見る必要があるため、11.5g/dlを下回るようなら注意が必要です」

 一方でヘモグロビンの数値が高すぎる場合にもご用心。

「赤血球の暴走や、ストレスなどが理由で過剰に赤血球が増加する多血症という病気があります。血が濃いと血液がドロドロになるので心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症を引き起こす傾向も。がん患者でなければ、献血して血を薄めるのもいいでしょう」

 日常生活で最も気をつけたいのは食事だ。

「鉄分は食事でとるのが大原則です。いちばん手っ取り早いのは肉類。血の多い食べ物が血の材料になるので、イチ押しは豚や鶏のレバー。

 赤身肉では、鶏肉より豚肉、豚肉より牛肉がよく、羊肉や鴨肉などに加え、サラミソーセージもおすすめです。魚でいうとカツオやマグロ。“まな板が血で赤くなる食べ物”がいいんです

 また、赤血球のヘモグロビンは鉄とタンパク質でできているので、それらを含む食品を一緒にとることも大切。

「その意味でも、肉や魚は外せません。鉄分を含む野菜や豆類を食べるときも肉や魚を一緒に食べることで効果が高まります」

鉄分の多い野菜はタンパク質とセットで!
鉄分の多い野菜はタンパク質とセットで!
【写真】「貧血セルフチェック」2つ以上該当する人は貧血の疑い

 ただし市販のサプリや鉄剤には安易に頼らないのが賢明。

「自己判断で飲むのは避けて。貧血かと思ったら別の病気だったということもありますし、必要以上に鉄をとりすぎると肝臓に鉄分が沈着して肝臓がんのリスクが高まることもわかっています」

 治療で大切なことは、ヘモグロビンの数値が正常になったからとすぐに治療をやめないこと。身体に鉄が貯蓄できていないと、すぐにぶり返すからだ。また過剰摂取もリスクになりうるので、治療は必ず医師の判断のもと行いたい。

「更年期を過ぎた女性は本来、貧血にはなりにくいはず。貧血が疑われる人は“ただの貧血”と思わずにまずは1回、受診してみることをおすすめします」

秋津壽男先生●秋津医院院長。総合内科専門医。“スーパー町医者”として地域密着の診療の傍ら、“医療の雑学王”として多方面で活躍。『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)などでもおなじみ。
秋津壽男先生●秋津医院院長。総合内科専門医。“スーパー町医者”として地域密着の診療の傍ら、“医療の雑学王”として多方面で活躍。『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)などでもおなじみ。

教えてくれたのは……秋津壽男先生●秋津医院院長。総合内科専門医。“スーパー町医者”として地域密着の診療の傍ら、“医療の雑学王”として多方面で活躍。『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)などでもおなじみ。


取材・文/荒木睦美