リスクは噛む力や歯とも関連性がある

噛む力が弱い人は、噛む力が強い人に比べ循環器疾患の新規発症リスクが最大5倍も高いというデータがあります。食事で咀嚼(そしゃく)した情報が脳に伝わると、消化吸収が促進され、副交感神経が活発に働くようになる。すると心拍数が抑えられ、血管が拡張して血圧も低下するからだと考えられます

 噛む力が弱まると、糖質が多く含まれるやわらかい食べ物を自然と選ぶようになり、それが動脈硬化を促進させるという意見もある。さらに歯の本数も関係するという。

65歳以上の日本人2万人を対象にした調査では、歯が20本以上残る人と比べ、10~19本の人は死亡率が1.3倍、0~9本の人は1.7倍上昇したというデータがあります。歯が多く残る人ほど認知症や転倒リスクが低く、心臓疾患との関連もあると指摘されています

歯周病がある人は血管の状態を悪化させ循環器疾患を招き、さまざまな病気につながりやすくなることが指摘されている※写真はイメージです
歯周病がある人は血管の状態を悪化させ循環器疾患を招き、さまざまな病気につながりやすくなることが指摘されている※写真はイメージです
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 そして、飲酒する人はそのリスクも気になるところだが、適度であればよいそう。

 マサチューセッツ総合病院の研究によると、1日に男性でビール500ml、女性で250mlを摂取したグループは、まったくアルコールを摂取しない人や、少量だけ摂取した人と比べ、心血管疾患のリスクが21.4%減少。脳の画像検査では、扁桃体のストレスシグナル伝達も低下していた。

適度な飲酒がストレスを緩和し、心臓に良い影響を与えたのでしょう。ストレスにより炎症細胞が過剰に放出されると、動脈硬化の一因となるプラークができたり、動脈瘤を形成することもわかっています

 アルコールには利尿作用があるが、適量であれば摂取と排出のサイクルが一定に保たれ、ストレスホルモンであるカテコールアミンのバランスも整い、心臓への負荷が抑制される可能性がある。ストレス軽減、睡眠誘発、排尿促進、食欲増強というアルコールの恩恵を受けるには、適量が重要だ。

心臓の弱い方や服薬中の人は、ビールなら350~500ml、ワインはグラス2杯、日本酒は1合が目安です