お酒が認知症対策!? 片道2時間の通勤をする90歳の実態
実年齢を忘れそうな身体はどうつくられたのか、香川先生の日常生活を伺った。
「1週間のうち平日の半分は、自宅がある栃木から電車を乗り継ぎ、片道2時間かけて埼玉県にある大学に出ます。朝食は必ず家でとり、昼は主に学食で。食後に1時間ほど昼寝もします。大学院生の実習報告が土曜にある場合は、帰宅が夜10時過ぎになることも。今も研究を続けているので被験者の採血を朝7時から行う場合は、大学の最寄り駅前にあるビジネスホテルに1人で前泊です」
66歳からの20年間は、大学近くのアパートで単身生活、朝夜は自炊をしていた。
「でも90歳前後になると、どんなに健康でもアパートを貸してもらえません。だから今は電車通勤です」
健康の秘訣は通勤しない日も決してのんびりしないこと。運転免許は返納したので愛車は自転車。これで買い物にも、家から1キロ先の公園にも行くという。外に出ない日はエアロバイクをこぐ。朝のラジオ体操と就寝前のダンベルも日課だ。
「自転車を移動手段にしているのは、平衡感覚を維持して転倒を防ぐため。それに、歩くだけでは筋肉はつきません。負荷をかけた運動も必要です。よく一日1万歩と言いますが80、90代は6千歩で十分。やりすぎると活性酸素が増えてテロメアが短くなっちゃいますからね」
テロメアは一定の短さになると細胞分裂が止まり、死につながってしまう。
遺伝子の研究者でもある香川先生は、大学副学長就任を打診された70歳のころ、自身のテロメアの長さを測り、百歳くらいまでは大丈夫と予測できたので応諾したという。
「テロメアは、生活習慣の改善次第で、短くなるのを遅らせることも可能なんです。50、60歳を過ぎたから今さら何をしても無駄、などと諦めなくていいんですよ」
栄養学者だから朝昼晩の食事には気をつけているが、学内のパーティーではお酒もたしなむという。

「一日5グラムの微量のアルコールが認知症、軽度認知症に有益というデータもあります。ただし、お酒については個人差が非常に大きいので注意が必要。アルコールに弱い人は飲むのを控えて、自分は飲めると思っていても1日換算で純アルコール20グラム以下が適正です」