「生まれたときは、口元や鼻が割れた状態でした。片耳がなく、心臓には3つも穴があいていたんです」
そう話すのは、重度の口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)で生まれ、21回に及ぶ手術を乗り越えた小林えみかさん。
病気への無理解や容姿に悩んだ経験をもとに、現在は口唇口蓋裂患者の交流会「NPO法人 笑みだち会」を立ち上げ、病気の啓発と患者サポートを続けている。
口唇口蓋裂とは、500人に1人という比較的高い割合で罹(かか)る先天性の形態異常のこと。唇や口蓋、上顎などに亀裂が生じるが、程度は人によりさまざまだ。
多いときは3か月に1度は手術を繰り返す
「私は口唇口蓋裂のほかに顎の変形、重度の難聴と、耳の形成不全を患う小耳症、血が止まりにくくなるフォン・ヴィレブランド病など、さまざまな病と闘ってきました。
生後3か月で唇を閉じる手術をして。物心ついたときには病院のベッドの上でしたし、自分はほかの人と違うんだと気づきいたときは、子どもながらにショックでしたね。
まわりの子からは、ジロジロと覗(のぞ)き込むように見られたり、指をさされて笑われたり。難聴と噛み合わせの悪さのせいで、うまく喋(しゃべ)れないことをからかわれ、保育園ではまったく話さなくなってしまいました」
地元の公立小学校では、周囲のサポートにも助けられた。
「友達には恵まれましたが、私が病気だと知らない子には、滑舌の悪さを誇張してまねされて、受け口や豚鼻のしぐさをされる。ただ、そんなことは日常茶飯事すぎて、誰かに弱音を吐いたり相談することはありませんでした。それでも無自覚にストレスを感じていたようで、いつしか円形脱毛症になってしまって。
それに気づいた先生たちが、今でいう多様性やマイノリティーへの配慮について全校集会で伝えてくれたおかげで、からかいはなくなりました。両親からは嫌なことがあったら必ず誰かに伝えなさいと、口酸っぱく言われました」