積もり積もった感情で母親にも反抗

 高校2年生のときは下唇を切り取って、これまでなかった薄かった上唇に移植手術を行った。3年生のときには、1年に3度も大手術に挑んだ。耳を形成する手術は8時間にも及ぶ厳しいものだった。

親友ができてやっと充実した日々を送れていたのに、口唇口蓋裂のせいでそれを奪われた気がして……。こんなに苦しい思いをしてまで手術をしたくない!と積もり積もった感情が爆発。生まれて初めて母親に反抗したんです

 思いもしない娘の本音に驚く母親だったが、これをきっかけに親子は絆を深めていく。

9歳のときには上顎を前に出す、当時最先端の手術を行った。中学に上がると友達はできたが治療を優先した結果、学校を休みがちになり、やがて不登校に
9歳のときには上顎を前に出す、当時最先端の手術を行った。中学に上がると友達はできたが治療を優先した結果、学校を休みがちになり、やがて不登校に
【写真】生まれてすぐの小林えみかさん、このあと唇を閉じる手術をおこなった

母は涙ながらに私を抱きしめて、今まで私の気持ちに寄り添えていなかったことを悔やんでいました。そんな姿に、私まで泣けてきて。隠し続けていた思いを吐露すると“つらいときは甘えていいんだから、一緒に頑張ろう”と言われ、愛情を感じました

 周囲の支えもあり、大手術を乗り越えた小林さん。20歳のころには、この疾患の手術が一段落つく。

「闘病生活にもやっとゴールが見えたことで、これまでの経験を知ってもらいたいとブログを始めました。同じ病気の人たちと思いや苦労を共有して、支え合えたらと考えています」

 その後は同じ疾患の子どもを持つ母親との出会いをきっかけに、大阪で患者会「笑みだち会」を立ち上げる。