介護のプロでも、在宅は限りがないのでストレスがたまりやすい
昨年末から、寝かせきりの状態になり、「オムツ替えと食事の準備と掃除などの家事をするだけ。介護が楽になった」
尿、便漏れ対策のために、簡単にボタンが開けられないつなぎ服を利用したことで、衣類、シーツ、布団が汚れることがなくなり、介護負担も大幅に軽減された。
取材におじゃました日の昼食は、大根入りのおかゆ、かぶの煮物、さつまあげ、お茶。食材は食べやすいように小さく、やわらかくという工夫がされている。きよさんは「うまいな」と言いながら、お箸を使って平らげる。
瑞穂さんがやって来た日は、入浴の連携プレーが始まる。
ベッドを低くし、畳にタオルを敷きその上に座らせ、部屋の端まで引っ張って移動。姉妹2人がかりでタオルの端と端を持ち、風呂場へ。服を脱がせ瑞穂さんが身体を洗っている間に、紗弥加さんが洋服を漂白剤につけて洗濯の準備をする。さらに、ベッドのシーツも替え、掃除機をかける。その手際のいいこと!
「あ~気持ちいい。何ともいえん気持ちや。(そろそろ出るよと声がかかっても、)まだあかん。もう1回入らせて」
そう言いながらきよさんは、ちょっとした長風呂を楽しむ。
さっぱりした表情の風呂上がり。興が乗ったのか、♪う~しろ~は、や~まで、よ~いよ~いとまかしょ~♪といい調子で歌い上げる。村の盆踊りの曲。きよさんは歌い手代表を務めていた。きよさんは子ども時代、独身時代の記憶力が抜群で、昔の曲もそらで歌えるという。
受け答えもしっかりしていて、認知症だということを忘れてしまいそうになるが、5分おきくらいに、窓の外を見て「雪、降ったんやろか」。
お風呂は気持ちよかったですか? と記者が尋ねると「わからん」。たびたび「もう限界や、はよ死にたい」と繰り返す。症状は深く刻まれていた。
記者に何度も「誰?」と尋ねてきたが、別れ際には「よう来たな。横山さんね。気をつけて帰ってよ」と、何度伝えても聞き返されていた名前がさらりと口に出る。不思議。
介護のプロの紗弥加さんでも、在宅は限りがないのでストレスがたまりやすいという。
「少しずつ親を看る前の生活に戻していくことが大切です。ベッタリしすぎない。共倒れが一番怖いですから。先回りしてすべてをやってあげるより、本人ができることはやらせるようにしてあげたほうがいいと思います」
きよさんと2人の娘による在宅介護生活は今年、4年目の春を迎える。
「春になったら、冥土の土産に花見や食事など、外に連れ出そうと四女と話しているんです。今はとっても楽々介護をしています」
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介護に完璧を求めては、無理がたたる。頑張りすぎないことが大事だ。見返りを求めず愛情をそそぎ周囲の協力を得てゆっくりと歩む。生き地獄を照らす光を、家族たちは見つけていた。