スマホの使いすぎは万病のもと。便利に使いこなしているつもりのスマホに、現代人の多くは逆に使われている、知らぬ間にスマホに支配されているのではないか。医療関係者がそのように警鐘を鳴らす、スマホ発の体調不良が、ジワリジワリと利用者をむしばんでいるという。
小学生でもスマホをいじっている昨今、目の酷使が、老化を早めている。浅川クリニックの浅川雅晴院長に聞いてみた。
「育ち盛りの若いうちからスマホやゲーム漬けでいると、30~40歳くらいで老眼を発症してしまいます」
目が疲れるのは、最も自覚できる症状だが、目薬をさす程度では気休めにすぎない。
「ガラケーに比べスマホの作業は複雑で、脳への負担が多く、脳細胞が疲れやすくなります。人間の脳は本などを読んでゆっくりと考えることに向いており、次々に流れてくる大量の情報を追っていると、オーバーヒートしてしまいます。気がつくと1時間ぐらい使い続けていることがありますが、その間、脳、目、指は働き続けているため、三重に疲労がたまっていきます」
さらに、浅川院長はこう続ける。
「脳の疲労によって“テクノストレス”が生まれ、それによる不眠を『テクノストレス不眠』と呼びます。寝る前に画面の明るい光が目に入ると脳が刺激され、活動時や緊張時、ストレスを感じている時に働く交感神経が活発になり、寝つけない、眠りが浅いなどの問題が生じます」
そして、意外な影響も指摘する。
「唾液はリラックス時などに働く副交感神経の作用で出ますが、交感神経が働き続けると出なくなり、口内の細菌が異常繁殖します。結果、口臭が強くなってしまうのです」
さまざまな症状が、スマホによってもたらされるが、「30年間で10万人以上の患者さんを診てきた」という東京脳神経センターの松井孝嘉理事長は「めまいや発熱、全身倦怠など不定愁訴と呼ばれる症状が起こり、幸せや安らぎを感じられなくなります」と、首こりから生まれる症状の重さを指摘する。
「体内の生命活動をコントロールする自律神経が乱れ副交感神経の働きが弱まると、疲労が取れなくなり、昼間から横になったりする人もいます。多くの人は、体調不良の原因が首にあるとはまず思わないでしょう。
症状に見合った病院をはしごしても治らないから、さらに気持ちがふさぎこみ、パニック障害やうつへとつながっていきます。ひどくなると重い精神疾患、最終的には自殺思考になる人もいます」(松井理事長)