■取材後記「著者の素顔」
「小説とは、答えを出してはいけないものだと思います」と話す篠田さん。確かに篠田作品では、「こうすれば前向きに生きられますよ」といったわかりやすい答えは提示されない。
「“これなら読者は感動するだろう”という安易な答えを出すことも、やろうと思えばできるんですよ。でもそれは作家の良心に関わるし、そんなぬるい小説にはしたくない。少なくとも、あとで自分で読み返して、土に埋めたくなるようなものだけは書きたくないわ(笑い)」
取材・文/塚田有香
撮影/齋藤周造
〈著者プロフィール〉
しのだ・せつこ 1955年、東京都生まれ。1990年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。1997年『ゴサインタン—神の座—』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、2011年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、2015年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞を受賞。