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 NHKスペシャルの放送をきっかけに、広く知られるようになった『腸内フローラ』。最近は、テレビ番組や雑誌で『口内フローラ』『肌フローラ』が取り上げられ、目にすることが増えている。

 “腸博士”として知られる東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生に話を聞いてみた。

 腸の直接の栄養源は、昆布やチーズ、しいたけ、トマトなどに豊富に含まれている「うまみ」成分のグルタミン酸と、腸内細菌が食物繊維を発酵させて作る短鎖脂肪酸。

 糖質制限食で控えたほうがいいとされる、白米やうどんといった白い炭水化物は、脳が消化吸収を優先するように指示を出し、その仕事に追われるため疲れる原因となり、腸内細菌にも影響を及ぼす。

 白い炭水化物を食べすぎたときに、胃酸による胸やけや、お腹が張っておならが出るのは、腸からのSOSサインという。

 そうならないために、腸内環境をセルフチェックできる方法に“お通じ”がある。

 理想の排便は、①毎日、もしくは2日に1回出る、②排便時間が3分以内、③毎日、同じ時間に出る。さらに、量、形、色が重要で、量は300g以上、形はバナナ状、色はきれいな茶色や黄金色、ふんわりにおう程度がいいとされる。

「軟便やニオイが強いのは、腸内環境が悪いことを意味しています。腸内細菌によい食生活をすれば、便の状態は早ければ1日で変わりますよ。

 腸内細菌は、病気を予防する免疫、生き生きとするための女性ホルモンや男性ホルモン、ビタミン合成、メンタルを助ける幸せホルモンの神経伝達物質『ドーパミン』や『セロトニン』、酵素などを作り出し、脳以上に大事だと言えま

す。

 そのためにも、食べ物や生活習慣に気をつけて、腸を“もうひとりの自分”だと意識して、健康的な身体づくりをしていってほしいと思います」

 “大食いなのにやせている人”と“水を飲んでも太っちゃう、と嘆く人”。その体形の違いが、実は腸内環境にあることが、遺伝子解析の発達でわかってきた。

 腸内フローラにどのような細菌群がいるのかを調べたところ、悪玉菌を好む日和見菌の『フィルミクテス門』は太った人の腸内に多く存在し、善玉菌を好む日和見菌『バクテロイデス門』はやせた人に多く存在する。

 マウスの実験では、太ったマウスから採取した腸内細菌を植えつけたマウスが肥満になった。

 低食物繊維、高カロリー食のイタリア人はフィルミクテス門が優勢。高食物繊維、低カロリー食のアフリカ人はバクテロイデス門が優勢との研究発表もある。

「太ったり、やせたりするのは食品のカロリーではなく、おデブ菌、やせ菌を持っているかどうかです」

◎教えてくれたのは藤田紘一郎先生

 東京医科歯科大学名誉教授。医学博士。東京医科歯科大学卒業。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。著書に『脳はバカ、腸はかしこい』(三五館)『最新!腸内細菌を味方につける30の方法』(ワニブックス)