手の指や手のひらに痛みを抱えている人は多いもの。その要因のひとつといわれているのが「腱鞘炎」。安静にすれば痛みが改善される場合も多いが、料理に洗濯、子育てや仕事においても、手を使わないというのは非現実的……。そこで、日常生活を送りながら手の負担を軽減する方法を紹介。
あなたは、こんな症状に困っていませんか? あてはまる人は腱鞘炎の可能性も。
・手の親指の根元(手のひら側の膨らんでいる部分)が熱を持ち、だるさがある
・手首を動かすとだるさや違和感がある
・手の指を動かすときに関節にこわばりを感じる
・手の指の根元を触ると痛みがある
・手の甲の延長にあるひじ付近の筋肉が張ってくる
ひと昔前までは、テニスやボウリングといったスポーツ選手や、作家など、手を酷使する人の職業病というイメージが強かった腱鞘炎。
しかし現代では、スマートフォンやパソコンの普及といったライフスタイルの変化や、女性ホルモンの分泌との関係が解明されるようになり、女性とは切り離せない症状となっている。
では、知らず知らずに手を酷使する行動、職業とは?
文字を打ち込む際に、指の動きが多くなるスマートフォン。そもそもガラケーより幅広で、持つ際にも手が大きく広がるので、長時間スマホを持っているだけでも手には負担。パソコンはキーボードやマウスを使うときに、知らず知らずのうちに手を酷使していることも。
主婦のパートタイムで従事している人の多いレジ打ち。ひと昔前は、値段を打ち込む手法がメインだったものの、現在は商品のバーコードをスキャナーで読み取る「POSレジ」が一般的。商品を持ってかごに移し替える作業を1日に何百往復もすると、腱鞘炎のリスクは高い。
レジ打ち同様に、主婦のパートとして人気の飲食店のスタッフ。キッチンはもちろん、ホールで食器を積んだトレーやお盆を手のひらを広げて持つことで、手に負担が。
美容師はハサミを動かし続けたり、髪の毛を持ち上げたりと手を酷使する職業のひとつ。
洗濯や料理で物をつかんだり、買い物袋を持ってスーパーと家を行き来したりと、家事でも実は知らず知らずに手を酷使しているもの。
要介護者の身体を支えたり、重たいものを持ったりと介護は重労働。家事同様、毎日のように行うことで手に負担がかかる。
また、女性の場合は、手の酷使とは別に、腱鞘炎になるリスクがあるそう。
「妊娠中にはプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されるのですが、これが腱鞘を収縮させると言われています。また、閉経後には、エストロゲン(女性ホルモン)が減少することで、腱鞘の柔軟性がなくなって、炎症を起こすリスクが高まることも」(スポーツドクターの末武信宏先生)
■急性の場合は冷やし慢性の痛みは温める
女性にリスクが高い腱鞘炎。病院ではどういった治療が受けられるのか。
「まずは安静です。あまりにも痛みが強いようでしたら、ステロイド注射で、痛みを緩和する場合があります。重症な人には、炎症によって狭くなっている腱鞘を切開して広げる手術という選択肢も。ただ、そこまで重症な人は多くはありません」(末武先生)
では、軽度の痛みはどうすればいいのだろうか。
「急性の痛み/炎症であれば、冷やすこと。慢性の場合は温めるのがいいでしょう。腱鞘炎は繰り返し行われる運動行為に対して、身体の一部が悲鳴を上げているのです。“ここが悪いポイントだ”と身体がシグナルを出しているので、安静が最優先となります」(末武先生)
イラスト/柏屋コッコ