「わさおとわっしは運命の巡りあわせ」
今でもわさおは決しておとなしいとは言えない犬だ。犬小屋に近づく人にはしばしうなるし、ほとんどの人たちには、撫でることさえもさせない。
だが2011年の東日本大震災の被災者慰問では、100人以上の子どもたちに撫でられ続けても、うなり声ひとつ上げなかった。今でも身体の不自由な人が店にやって来ると、痛んだ部分をやさしくなめて慰める。
ライオンのように強く、人に媚びない気高さを持ちながら、傷ついた人・苦しむ人にはこのうえなくやさしい。
このグッとくるほどカッコいい犬には、誰しも引きつけられてしまう。
映画の公開から5年たった今も、わさおに会いに、遠くは鹿児島や台湾からもやって来る。海水浴の途中に立ち寄ったという弘前大学のグループは、「わさおに会うのは今日が初めて。ぶすっとして、愛想のないところがいい」。
青木理香さん(28)、未来さん(26)姉妹は、「テレビで見て知って会いにきました。テレビとおんなじでかわいい!」と語る。人気は衰えず、この7月には、写真集『グレ子とわさお』(主婦と生活社)が刊行された。
日本中、いや世界中からわさお目当てにやって来る観光客に、七里長浜きくや商店も大にぎわいだ。