武田鉄矢(67)率いる『海援隊』のギタリスト・中牟田俊男が今年1月、食道がんを公表。約半年の療養を経て、7月にはライブで元気な姿を披露した。
「食道は、のどと胃をつなぐ長さ約25cm、太さ2~3cmの管状の臓器です。その内側の粘膜の表面にできるのが食道がんです」
と話すのは、国立がん研究センターの日月裕司先生。統計的に食道がんは、女性に比べて男性が約6倍なりやすいといわれている。
「平均年齢は65歳。通常は50代以降にかかり、3人に1人は70歳以上です。40代の患者さんは非常に珍しいですね」
初期症状はほとんどなく、見つかりにくいのが特徴。“飲み込みにくい”“食べ物がつかえるような感じ”などの自覚症状が出るころには、ステージ3まで進行していることが多いそう。
「ステージ3は、食道の外側にまでがんが広がっている状態です。その半数は、リンパ節への転移が見られます。ステージ3の5年生存率は40%くらいです。食道は血流が豊富なため、心臓など近くの臓器や遠くのリンパ(首や胃袋など)に転移しやすいこともあり、治りにくいがんです」
治療の基本は手術で、食道をすべて取り、胃袋を持ち上げてつなぐ。術後は量が食べられなくなったり、胸苦しさを覚えたりと、生活の質に影響が及ぶこともある。ただ、放射線と抗がん剤を組み合わせた治療でも、ほぼ同等の効果が見られたという報告もあり、選択肢は増えている。早期なら、負担の軽い内視鏡治療ですむケースも。
「早期で発見するには、年に1回、内視鏡検査を受けることです。バリウムを飲む胃のレントゲンでは、よほど大きくないと見つかりにくいですね」
発病に関係しているのは、喫煙と飲酒。
「飲酒の影響は非常に大きいです。問題は“どれだけ飲んだか”という総量。お酒の種類や濃さは関係ありません。休肝日を設けても、翌日にたくさん飲んだら意味がないです」
飲むとすぐ顔が赤くなるタイプの人は、体質的にアルコールを分解する酵素が少ないため、分解途中の物質がたまって、がんになりやすい傾向が。
「若いころは弱かったのに、付き合いで飲むうちに強くなった人は要注意です。酵素が少ないという体質が変わったわけでは、決してありませんので」
<この先生に聞きました>
日月裕司先生
国立がん研究センター中央病院食道外科長。複数の治療法を組み合わせる『テーラーメード治療』で他院では難しい病態にも積極的に対応。化学放射線療法後の再発への『サルベージ手術』でも有名。