まだまだ人生の旅は終わらない
31年間の長きにわたり『世界の旅』を続け、さまざまな文化を見続けてきたこの人に今の日本はどう映るのか?
「日本って恵まれたすごくいい国なんですよ。ところが島国なものだから、それがわかっていないんです。ほかがよく見えて、自分のところのよさが見えていない。
マナーにしろ文化にしろ、自分のところのよさをきちんと守っていかないと。1000年の昔から素晴らしい文学もあれば、文化もある。なのに世界でも数少ないそんな文化を、どんどんと壊しています。くだらない国にしちゃったら、もったいないですよ」
前述の対談集で、『世界の旅』をはじめ、マダガスカルでの援助活動など、さまざまなことをともに語らった作家の曽野綾子氏は、対談での印象をこんなふうに言う。
「実はあのとき(対談で)初めてお目にかかりましたが、テレビでお見かけしたことがございますから、(対談は)たぶんうまくいくだろうと思っていました。
それぞれ体験しているものは違いますけれども、外国に対する飽くなき興味というものがあります。その点だけでも大丈夫だろうと思いました」
おふたりに共通する、電気もなければ飲み水もままならない国々に平然と飛び込んでいくたくましさはどこから?
「わかりません。わたくしはできたというだけのことで。(ともにクリスチャン校出身だが)学校の教育でもないと思います。個人の個性の問題でしょうね。わたくしの場合は好奇心の強さだと思っておりますけど」
一方、兼高さんのたくましさの秘密を、“肉食系女子にあり”と語るのは、前出の清水支配人だ。
「あのね、先生はお肉大好きで、完全に“肉食系”なんですわ(笑)。ですから、淡路島にお越しの折にはですね、いつも淡路牛のステーキを食べていただいております。
三浦雄一郎さんがそうであるように、肉を昔から食べていらはる方は、パワーをお持ちなんですね」
前出の友人・草笛さんは、ひとり暮らしを続ける友を案じつつ、こんな意外な一面を語る。
「よく食べるんですよ、びっくりするぐらい。でもそれは、1日3食きちっと食べる生活をしないからです。朝だって“食べてないわよ”っていう調子だから、自己管理ができていない!(笑)。
私たちの年齢になりますと、夜中に何が起こるかわかりません。1人で寝ていて、病気などで電話にも出れないようじゃつらいですよね。友達としてそんなふうにはさせたくないし、私もなりたくない。だから電話が途絶えると、“病院に入っているのかも”と心配で心配で……。私、電話でいつも怒るんですよ。“なにやってんの! 自己管理をちゃんとしなくちゃダメじゃない!”って」
とはいえ、仕事となると見事に切り替わる。
『兼高かおる資料館』では、兼高さんの来訪があるとメディアからの取材依頼が殺到する。支えたりのエスコートが必要と思っても、ライトがつき、カメラが回り始めたとたん、シャキッとされると清水支配人。連日2時間以上にもわたり、立ちっぱなしで取材に対応されたときには、放送回数1586回、150か国訪問のガッツとプロ根性を垣間見たようで、感服のひと言だったと語っている。