小日向 僕はひどかったですよ。公演初日の10日〜2週間前は、バイトに行けなくなっちゃう。バーやクラブのボーイ、銀座の喫茶店、原宿の深夜レストランと、掛け持ちでやっていました。それで家賃もギリギリ。4畳半で2万5000円。23歳のときで、ちょうど40年前。
でんでん 僕も4畳半の部屋で、小さな流し台があって、トイレは共同(小日向・大杉「そうそう」)。トイレが部屋の隣で、誰が入ったかわかる。音は聞こえて当たり前。日当たりも悪くて、もやしにならなくて、よかったです(笑)。引っ越すときに冷蔵庫を動かしたら、カビだらけ。でも大家さんがいい方で、(家賃も)滞納していたのに、“すいません”って謝ったら、“いいんですよ”って。
大杉 キラク荘の大家さんもそうでしたよ。“お芝居やっていると大変だから、いいですよ”って。日当たりもよかったし、窓を開けたらプラムの木があって、取り放題でした(笑)。
小日向 ホント〜。2万5000円の部屋は、壁に隙間があって隣が見えたの。声が丸聞こえだった。
大杉 (下積みの)苦労とかよく言われたり、聞かれたりするけど、本人は全然そんなこと思っていなくて、実に楽しかった。
小日向 でも、アルバイトは嫌だったなぁ。接客業だったし……。
大杉 なんで接客業だったの?
小日向 劇場の真ん前で、横断歩道を渡ったらアルバイト先だったから……。
でんでん コヒちゃんと、僕らがやっていたバイトは正反対で、人との接点がないんだよ。
大杉 作業員のバイトで、そこが何になるのかもわからないまま、つるはしとスコップを渡されて、神宮や青山界隈で数多くの穴を掘りました(笑)。
でんでん 昔は、土地を1平方メートル掘ったらいくらとかあったよね。
小日向 全然そういう経験ないな。コック帽をかぶってチーズケーキ作っていたもん。
大杉・でんでん 全然違うね(笑)。