ペットとの触れ合いで分泌される「幸せホルモン」
実は、犬が高齢者の健康にいい影響を与えることは、欧米社会ではすでによく知られていて、多くの医療機関などでその効果の利用が進んでいます。
日本でも、老人ホームに犬を派遣して、お年寄りと犬との触れ合いの場を提供するような試みが行われています。それまではニコリともしなかったお年寄りが、犬を抱っこすると表情が変わり、感情が生き生きしてくるそうです。
実際、ペットが高齢者の精神にいい影響を与えるという研究が報告されています。麻布大学などによる調査では、ペットと目を合わせたりなでたりすることで、「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが飼い主に分泌されることが明らかになっているそうです。
こうした、動物によるいい効果を利用することをアニマルセラピーと呼びますが、日本ではまだまだ社会的な認知が広まっていません。
日本でワンちゃんによるアニマルセラピーを提供している株式会社ピーリンクの社長・藤森隆一氏は、現在の状況についてこう話してくれました。
「日本ではまだまだアニマルセラピーの知名度が低く、実績も少ないので、高齢者施設などでアニマルセラピーが実施されるケースは多くありません。
でも、高齢化がどんどん進行している日本でアニマルセラピーの有用性が理解されれば、現在、直面しているさまざまな問題を解決する一助となるはずです」
そして、アニマルセラピーは、高齢者問題について具体的にどのような効果を期待できるのか、藤森氏は詳しく説明してくれました。
「高齢者施設においては、刺激が少ないことや活動が制限されることなどから、入居者の社会性が低下し、抑うつ状態を招いたり、認知症が悪化したり、暴力や暴言が増えたりなどの問題が起こっています。
ところが、アニマルセラピーを実施すると、入居者にとって精神的にも身体的にも良い刺激となり、これらの問題が改善されていく傾向があるのです。
実際、弊社が実施しているアニマルセラピーのひとつ、『ペットシェア』によって、施設のスタッフから具体的な効果があったと喜ばれています」
高齢者施設からは次のような感想が寄せられているそうです。
●普段笑わない人が犬と触れ合うことで笑顔になった。
●口数の少ない人が犬にたくさん話しかけていた。
●犬が来ると施設内が明るくなる。
●入居者とスタッフに親近感が出た。
「このように、アニマルセラピーは高齢者施設の問題の解決に役立ちます。ぜひ、日本社会全体に広く理解が広がってほしいものです」
と藤森氏は語っています。