「平成の皇室というのは、天皇と皇后が常に一緒にいるというスタイル。これはふたりの結婚以来、ずっと続いていますね」
こう指摘するのは、政治学者で、天皇や皇室の研究を専門とする原武史さん。国民に近い天皇というイメージがあるが、それは皇后である美智子さまからの影響が大きいと話す。
「昭和36年に長野県の安曇寮という高齢者施設を訪れたとき、すでに美智子妃はひざをつき、ひとりひとりに声をかけられていました。今では被災地などで当然のように見られる風景が、最初の本格的な地方行啓のときからあったわけです。
写真で見る限り、当時の皇太子はまだ立ったままで接していましたが、そこから次第に一緒にしゃがむようになって、今の“平成流”になってきました」
次の鍵を握るのは雅子さま
象徴天皇としてのあり方を模索し、国民との距離を縮めようとされてきた。陛下や美智子さまが築かれた「開かれた皇室」の路線は、今後も継承されていくのだろうか?
「いまとまったく同じスタイルを踏襲するとは思えません。鍵を握るのは、新皇后となる雅子妃です。彼女が体調を回復させれば、結婚前に務めていた職歴が生かされるでしょうし、そうでなければ天皇の権威化が進むと思います」
雅子さまの外交官として積まれたキャリアが生かされるようになれば、美智子さまとは違ったアプローチもできるかもしれない。しかし、心配されるのは体調面──。
「10月の即位礼がひとつの試金石だと私は思っています。大きく分けて2つの可能性があります。ひとつは皇后としての重圧に耐えられなくなってしまう。もうひとつは環境が変わることで体調が回復し、いまとはまったく違う皇室をつくっていくということです」