一般的に「介護」というと、介護される人に献身的に向き合い、相手のことを十二分に思いやって、その人が生きやすいように手となり足となること……と、思ってしまいます。
心を尽くして介護したい……。でも「それでは、自分自身を壊してしまう!」と、警鐘を鳴らす人がいました。「いつしか疲れ果てて、心が折れてしまう家族もいるんです」。そう言うのは、40年にわたって認知症患者やその家族に寄り添い続けてきた、医師の杉山孝博さんと、認知症になった祖父母と7年もの同居経験がある、介護ジャーナリストでマンガ家の青山ゆずこさんです。
実はこの2人、認知症の介護についての対談やイベントを行う間柄。
「介護をおもしろくとらえて、自分なりに乗り越えている人がいるんですよ。それをマンガにしてね」
そんな2人の出会いを踏まえ、まずは杉山さんのお話からお伝えしましょう。
◆ ◆ ◆
認知症をオープンに!
助けを呼ぶことは恥ではない
「信頼できる人に、心の内を話してみてください。ラクになっていいんですよ」(杉山さん・以下、同氏のコメント)
認知症によるたび重なるトラブル、仕事と介護を両立させる困難さなど、家族の悩みは尽きず、介護疲れに陥ってしまうことも多々あります。私は、そんな人たちのために、『上手な介護の12か条』をまとめています。
●上手な介護の12か条●
第1条 知は力なり! よく知ろう
第2条 割り切り上手は、介護上手
第3条 演技を楽しもう
第4条 過去にこだわらないで、現在を認めよう
第5条 気負いは、負け
第6条 囲うより開けるが勝ち
第7条 仲間をみつけて、心軽く
第8条 ほっとひと息、気は軽く
第9条 借りる手は、多いほどラク
第10条 ペースは合わせるもの
第11条 相手の立場でものを考えよう
第12条 自分の健康管理にも気をつけて
認知症を知ることや受け流すこともすすめていますが、介護に疲れたら、第6、7、9条のように、「人の助けを借りる」ことが重要です。
例えば、第6条「囲うより開けるが勝ち」。これは、「親戚や地域の人にも“家族が認知症であること”をオープンにしよう」という意味です。認知症は決して「恥」ではありません。近所の方から「誰もが行く道ですから」「お互いさまです」と声をかけられて、心が休まったという話も聞きます。
また、第7条にあるように、同じ境遇の友人と話をして悩みを共有するのも有効です。各自治体の認知症相談窓口なら、ショートステイ先の情報など、具体的なサービスを紹介してもらえます。