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昨今、SNSなどでシンプルライフを発信し、インフルエンサーとして支持されているミニマリスト。なかには、家具ひとつない部屋で暮らしている人もいる。あまりにもスッキリとして生活感のかけらもない空間は、憧れの対象ではあるが、異和感も……。
ガランとした部屋は“普通じゃない状態”
「極端に何もかもを捨ててしまったり、衝動的にすべて手放したくなったりする人は、メンタルに不調を抱えている可能性があります」
そう注意を促すのは、精神科医の益田裕介先生。
「何もない状態が必ずしもダメというわけではありません。生活において不要かどうかを判断して手放していったのであれば問題ないが……」
と前置きをしつつ、精神科医目線で見ると、やはり“普通ではない状態”に見えてしまうと言い切る。
「すべてをなかったことにするという意味の“水に流す”という言葉がありますが、捨てるという行為は、この言葉と重なります。物を捨てすぎるというのは、すべてをゼロにしたいという思いの表れだと考えられます」(益田先生、以下同)
何らかの問題に直面して、潜在的にその現実から目を背けてしまいたい気持ちがあるとき、“代償行為”として物を捨てるという行動につながることがあるという。
「例えば、人間関係の悩みや不安を抱えていた人が部屋を片付けて一気に断捨離を行うことで、何となく気持ちがスッキリし、現実の問題まで解決したかのような錯覚を起こすことはあります。
問題はまったく解決していないのに、一時的に満足感や万能感が得られてしまうからです」
その快感が蜜となり、本来、快適に暮らすための“物を捨てる”という行為が、目的に転じる倒錯的行動パターンに陥ることも少なくないと益田先生は指摘する。