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ー 超高齢社会の中でニーズや説得力も
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ー 仕事のつらさより制限されない解放感

 内閣府の調査によると、60歳から69歳までのシニア層の就業率は今や50%を超えている。“生涯現役社会”が強まっているが、70代や80代となれば働くことに不安を覚える人も少なくないだろう。

 そこで話を聞いたのが、セールススタッフとして働く桑島恵子さん(72)。体力は?いつまで働くの?ホントの気持ちとは?

超高齢社会の中でニーズや説得力も

「健康になったと、みんなに喜んでもらえる仕事

「もともと家にいるより外で仕事をしているほうが性に合っているんです」

 そう話すのは家庭用医療機器販売・フランス総合医療で働く桑島恵子さん。ショッピングモールなどにある販売店舗で家庭用医療機器であるフランスベッド商品を販売する。正社員としてフルタイムで働き、営業成績もトップクラス。現役バリバリのセールススタッフだ。

健康に関する商品は超高齢社会の中でニーズはあると思いますし、若い人が販売するよりも説得力があるのかもしれません。お客様から身体の調子がよくなったと聞くと本当にうれしくて

 営業販売というと、ノルマや売り上げ目標もあり、コミュニケーションが得意ではないと苦手意識を持つ人も。しかし、「家にいるより全然いい(笑)」と、臆する様子はない。

 もともと販売経験が豊富な桑島さん。高校を卒業して、昭和45年に三越に入社し銀座店に配属。社会人になり、働くことに対して胸が高鳴ったという。

「そのころの銀座は、ちょうどマクドナルド1号店がオープンしたり、歩行者天国がスタートしたりなど賑(にぎ)わっていて。販売の仕事で、さまざまな人と接することはとても刺激的でした。

 遠方で働く同僚が銀座に研修で来ることもあったので、普段なら出会うことのない人たちとの交流も多かった。思い出深い青春時代ですね

 当時、沖縄三越などができたばかりで、沖縄から来る人もいたそう。充実した社会人生活を送るも23歳で結婚し、それを機に退社する。

私は3姉妹の真ん中で、その年齢の結婚でも姉妹の中では一番遅かったんです。“寿退社”も普通のことでした

 1男1女が生まれ、都心から離れ、千葉の郊外に購入した家で暮らす。働くことが好きだった桑島さんはほそぼそとパートで仕事をするが、子育てや家事との両立は大変だったと振り返る。

夫は典型的な亭主関白で、女は家にいて夫が起きる前に包丁をトントン鳴らし、朝ごはん、みそ汁を作って待つのが当たり前、という人でした。価値観の違いや、性格の不一致をずっと感じていて……。子どもが18歳になるのを待って、離婚しました