「ステーキは噛むのが疲れるから苦手」「味がついていないので水を飲むのがイヤ」……。
こういった、一般的には信じられない理由から「食べ物が苦手」という若者や子どもたちが増えているという。
「アンケートを取ってみると、タコ焼きの中に入っているタコを『いらない』という若者も結構います。タコを『味がしない塊』『噛みづらい』といった理由で、タコ焼きから取り除いて食べるのだとか。中には『フワフワとした生地の部分の味だけを楽しみたい』という意見もありますから、タコ焼きが嫌い、というわけでもないんですよね」(ウェブメディア編集者)
どうやら現代の若者や子どもたちには、噛むことで味わいが増すものや、飲み込むことに意識が必要な料理や食材が苦手とされているようだ。
「食べられない」それぞれの事情
東京・荒川区で子ども食堂を運営しているNPO法人「いきば」代表の南谷素子さんによると、子どもたちが苦手という食べ物と、その理由に毎回、衝撃を受けているという。
「目玉焼きを『黄身と白身が分かれているから無理』と言った子がいます。『唐揚げは好きだけれど、一緒に食べたときの味が苦手。はがした衣を食べてから、鶏肉を食べる』という子や、魚卵や納豆を、味や食感ではなく『同じ形のものが集まっているものは怖い、吐き気がする』という子もいました。肉じゃがを出したら、じゃがいもがどれだかわからない。その子にとってじゃがいもとはフライドポテト一択なので、肉じゃがの中のじゃがいもを『得体の知れないもの』として食べられない……なんてことも」
本来は嫌いではないけれど、状態が変わると「ダメ」となる場合も。
「温かいものは大丈夫だけれども、冷えたご飯は『飲み込めないから嫌い』という声がありました。また、おにぎりは『必ずしゃっくりが出て、呼吸困難になるから家以外では食べられない』という子も」
なんとも衝撃的ではあるが、その理由になんとなく納得してしまうものも……。
「ご飯でいえば、混ぜご飯は『何が入っているか怖くて食べられないからすべて分解してからでないと口にできない』という子も。アレルギー持ちとかなら仕方がないですよね。また、ご飯に汁物をかける、いわゆる『ねこまんま』を、『お茶碗の中でご飯がじゃぼじゃぼしてしまい、集中して食べられないから嫌い』という子もいました」
長年、食に関わってきた経験から、南谷さんはこう分析する。
「YouTubeなどで、離乳食やさまざまな事情を抱えた子どもたちの偏食、食へのこだわりを取り上げる番組をよく目にします。離乳食から何でも食べさせれば、偏食がなくなるということでもなさそうです。『食べられない』や好き嫌いは、その子個人のわがままということだけでは決してなく、親から受けた味覚、生来の敏感な体質からのこだわり、飲み込む力、噛む力、家庭の食卓事情も含めて、大きな関わりがありそうだと実感しています」
衝撃的ではあるものの、事情は人それぞれ。このような食に対する反応は、そもそも日本の食文化が豊かだからこそ、出てきたことだともいえる気もする。