目次
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ー 乳がんに「切らない治療」の選択肢
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ー 直腸がんは「TNT治療」で切らずに治るがんに!?
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ー 人工肛門を避けられない患者に効果を発揮

 身体にメスを入れるのは覚悟が要るもの。だが今の医学の進歩では、患者の負担を考えて「切らない」を選べる治療法も確立しつつある。そういう選択肢があることは、万が一のときの大きな希望。具体的にはどのような治療法なのか、それぞれの専門医師に伺った。

 2022年度、日本人女性がもっとも多く罹患したがん乳がんだ。年間予測罹患患者数は全国で9万4000人を超えるが、その治療の現場でも切らないという選択が広まっている。経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)というもので、肝臓がんなどでは2000年代に導入されていたが、昨年12月から乳がんの治療としても保険適用となり注目を浴びている。

乳がんに「切らない治療」の選択肢

「経皮的ラジオ波焼灼療法は、早期の乳がんに有効な治療です。がんをターゲットに電極針を刺し、針から発生させたラジオ波の熱でがんを死滅させます」

 こう語るのは東京科学大学乳腺外科教授の有賀智之先生。身体に刺した針による治療で済むため、標準治療とされている部分切除と比べても極めて小さな傷で済むのが特長。乳がんは早期がんであっても数センチは切開する必要があり、場所によっては相当目立つ傷として残ることも。それが小さな針穴だけで済ますことができれば、心身への負担を大幅に軽減できる。

「ただし、がんの大きさが1・5センチ以下で単発性のがんであるもの。さらには触診や画像診断で、腋窩リンパ節の転移や他の臓器への遠隔転移がない等々、適用には条件があります」(有賀先生、以下同)

 適用条件を満たした場合、RFA治療そのものは多くの病院で3泊4日ほどで行われる。

「全身麻酔で手術を行い、脇の下のリンパ節の中で一番転移しやすいセンチネルリンパ節の生検を行ったのち、RFAを行います。個人差はあるものの、通電時間は10分前後。センチネルリンパ節生検を含めても1時間ほどで手術は終了です」

 ちなみに、ラジオ波焼灼直後にはがん内部の温度を測る。がん細胞は60度で死滅するため、70度を目標に焼灼をする。

「電極針に流れる電力量は調整できるのですが、周囲の温度は調整することができません。患者さんの体質によっては温度上昇がしづらい場合など、焼灼が難しい場合があります。また焼灼した部分がしこりとして残ることがあることも事前に知っておいたほうがいいでしょう」

 RFAといえど、その後の定期検診の必要性は切除手術の場合と変わらない。

「術後3~4週間後には再発を減らすための放射線治療を受け、その3か月後に乳房MRIや針生検などでがんの遺残がないかを確認します。そして万が一、再発した場合でも、定期検診で見つけられるようにすることもRFAには欠かせません」

 治療後5年間は通院し検査が必要となる。

「注意してほしいのは、自分の乳房の状態に関心を持ち、乳房にしこりやひきつれ、えくぼのようなくぼみがないか、などを普段からセルフチェックすることです。そして、しこりなど、いつもと違うものを感じたら、すぐに乳腺科や乳腺クリニックなど乳腺疾患を専門とする医療機関を受診するようにしてください」