『ストンと寝てパッと目覚める「眠る力」に必要な3つの生体リズム』で紹介した「深部体温リズム」を調整するには、食事・運動・入浴も重要なカギとなる。
夕方は意識して肛門を引き締めて
実は、筋肉量が多い人ほど睡眠は深い。睡眠に悩む人が男性より女性に多いのは、そのせいでもある。
そこで、運動によって筋肉量をアップすれば、それだけ眠りの質はよくなる。ステップ1で「夕方に運動をして深部体温を上げておくとよい」と紹介したが、特にオススメしたいのが筋トレだ。
「歩いているときや座っているときに、肛門をグッと締めて背中とお尻の筋肉を使うだけでも効果が。帰りの通勤電車で立っているときとか、家でソファにごろんと横にならないよう気をつけるだけでも体温は上がります」(患者に睡眠指導も行う作業療法士の菅原洋平さん)
ディナーでは辛いものを食べる
「1日3食、規則正しく」が基本。特に、夕食の時間には配慮が必要だ。胃の中に食べ物が入ったままでは寝つきにくい。睡眠中は消化作用が弱いので、目覚めたときにムカムカすることも。
「ぐっすり、スッキリを実現するには、寝る2~3時間前には食べるのをやめましょう」(東洋羽毛工業株式会社の睡眠健康指導士・金子勝明さん)
夕方以降は、覚醒作用があるカフェインは避けて。
「身体を温めるカプサイシン、血行をよくするグリシン、睡眠ホルモンのもととなるトリプトファンなどを含む食材を食べると快眠につながるのでオススメです」(金子さん)
お風呂はぬるめのお湯に10~20分
運動と同じような効果で寝つきをよくする方法として、入浴も有効。
「全身が温まると皮膚の表面から熱が放散され、深部体温が下がる準備を始めます。これが下がるときに眠くなります」(睡眠障害に詳しい『スリープクリニック銀座』院長の渋井佳代先生)、以下同)
ポイントは温度と時間帯。
「38~40度くらいのぬるめのお湯に10~20分ゆっくり浸かると身体全体が温まってきます。同時に筋肉のこりがやわらげられ、リラックス効果も得られます。どちらも寝つきをよくするために重要な条件です」
お風呂に入るタイミングは、床につく1時間前くらいがベスト。あまり早いと体温を下げるタイミングがずれてしまうので注意。
寝酒はダメ! 浅い眠りのもと
眠れないとき、お酒に頼る人は多いようだ。確かにアルコールは血行をよくして深部体温を上げるので、寝つきがよくなるが、
「一方で深い眠りを妨げる作用もあるため、途中で何度も目覚めたり、早朝に目を覚ましてしまったり、質のよい睡眠は得にくくなります。また、アルコールには利尿作用があるので、夜中にトイレに行きたくなって何度も目が覚めてしまうこともありますね」
〈プロフィール〉
渋井佳代先生◎スリープクリニック銀座院長。睡眠医療認定医。信州大学医学部卒業後、国立精神・神経センター国府台病院精神科睡眠外来などを経て現職。特に女性の睡眠障害に詳しい
菅原洋平さん◎作業療法士。ユークロニア株式会社代表。民間病院精神科を経て国立病院機構で脳のリハビリテーションに従事。脳の回復には睡眠が重要であることに着目し臨床実践
金子勝明さん◎睡眠健康指導士、睡眠環境・寝具指導士。東洋羽毛工業株式会社で営業企画や分析のみならず、眠りの研究を続け、睡眠講座の講師として全国を行脚