まず、脳をしっかり働かせるためには、エネルギーが必要です。

 私たちの脳はたくさんの神経細胞から構成されており、その間を電気信号を伝えることでものを考えたり、身体を動かしたりしています。この神経細胞のエネルギーが、ブドウ糖です。ブドウ糖とは、ご飯やパンなどの主食が消化されることで作られます。

 つまり、しっかりと主食をとることで脳はエネルギーを得て、初めていきいきと活動することができるわけです。

 しかし、ご飯やパンだけ食べればいいのかというと、そうではありません。

 脳の神経細胞の間をつなぐ電線のようなものを「シナプス」といいますが、子どもが何かを学んでいくとき、このシナプスが急激に太くなったり、枝分かれをします。この変化を起こすために、ブドウ糖だけでなく、様々な栄養素が欠かせないのです。

 主食といろいろな栄養を含むおかずの両方をとらないと、脳は健全に発達ができないというわけです。

 このことについては、私たちの調査でもはっきりとしています。朝食のおかずの品目数と認知機能との相関を調べたところ、「おかずの数が多いほど発達指数は高く、少ないほど低い」という驚くべき関係があきらかになりました。

 それは「おにぎりだけ」とか「トーストだけ」の朝ごはんでは脳は十分に働かない、ということです。

 おかずを一緒にしっかりとることで、はじめて子どもの脳はそのパフォーマンスを十分に発揮することができるのです。

なぜ「朝食」が大事なのか

 ではなぜ、「朝食」が大事なのでしょうか。朝は食欲がないから、お昼ごはんをしっかりとればいいのでは?と疑問に思う人もいるかもしれませんね。

 その答えは、文部科学省が行った調査「朝食摂取と体温の関係」からわかります。

 この調査では「朝食をしっかりとった子ども」と「朝食抜きの子ども」の1日の体温変化を調べました。すると、朝食をしっかり食べた子は朝からしっかりと体温が上がっているのに対し、朝食抜きの子どもは午前中だけでなく、1日を通してずっと体温が低いことがわかったのです。

 つまり、朝ごはんを食べないと、全身の細胞レベルで1日中、代謝が低い状態になるということです。

 これは脳細胞だけの話ではなく、当然、身体を動かす能力も低くなります。

 同じく文部科学省が行った調査で、朝食を毎日食べる子に比べて、朝食を食べない子は50メートル走、シャトルラン、持久走、すべてにおいて成績が悪かった、という結果からもはっきりとわかっています。