子どもの意欲をあげるのは「一緒に朝ごはん」だった
ご飯を主食に、おかずをしっかり食べる。
子どもの頭をよくする朝ごはん習慣の重要ポイントをこれまでお話してきました。最後に、子どもの意欲を引き上げる、朝食のもうひとつの重大なポイントを紹介しましょう。
それは「親子で一緒に朝ごはんを食べる」ということです。
実は、教育学の世界では「子どもの意欲を引き上げる方法」というのは、長らく答えが見つかっていない問題で、誰にもわかりませんでした。
私たちは心理学、認知科学、脳科学の研究者を集めてチームをつくり、調査データの解析を行ったのです。教育学的観点から一度離れ、新鮮な知見で精査を行いました。
そこでわかったのが「健康的な生活習慣」が子どもの意欲に強い影響を与えており、なかでも「朝ごはんを食べる習慣」が突出して影響を持っているということでした。
ほめたり、ごほうびをあげたり、罰を与えたり――多くのおやごさんが手を尽くして子どものやる気を引き出そうとしていると思います。しかし、統計的な分析では、朝ごはんこそ、最も強く子どもの意欲を引き出す効果があることが判明しました。
ところが、私たちの調査によると「毎日一緒に朝ごはんを食べている」という保護者は半数以下、という何とも悲しい結果が出ています。
朝、ほんの10分、15分だけでも子どもと一緒に食卓を囲み、栄養たっぷりの朝食を食べる。
それは、どんな脳トレよりも、ドリルよりも、塾よりも、子どもたちの脳にとって、将来にとって強い影響を及ぼす習慣です。
子どもたちの心と身体を健全に育て、将来の可能性を最大限に引き出すために、ぜひ、明日から、子どもたちとの朝食習慣を大切にしていただければと願います。
川島隆太(かわしま・りゅうた)◎東北大学加齢医学研究所所長 スマート・エイジング国際共同研究センター長。東北大学大学院医学研究科修了、スウェーデン王国カロリンスカ研究所、東北大学加齢医学研究所助手、講師、教授を経て、2014年より同研究所所長。任天堂DSゲームソフト『脳を鍛える大人のDSトレーニング』、学習療法を応用した『川島隆太教授の脳を鍛える大人の音読ドリル』シリーズ(くもん出版)などで一躍、時の人に。人の脳活動の仕組みを研究する「脳機能イメージング」のパイオニアであり、脳機能開発研究の国内第一人者。研究で得た知見を産学連携に応用、その実績から総務大臣表彰、文部科学大臣表彰。『脳が活性化する大人のおもしろ算数脳ドリル』(学研プラス)など著書多数。