ADに特徴的な『リン酸化タウ』
早期発見のために徳田教授が着眼したのは、
「血液中に含まれる『リン酸化タウ』というタンパク質の濃度を計測しました」
ADは70歳前後に発症するとされているが、脳内ではそれ以前から変化が起こっているという。徳田教授がADの原因について説明を続ける。
「『アミロイドβ』と『リン酸化タウ』というタンパク質が原因です。『アミロイドβ』がAD発症の20年以上前から脳内に蓄積するのに対し『リン酸化タウ』の場合はAD発症の10年ほど前から急激に増加・拡大するのです。この『リン酸化タウ』が脳の中で悪さをして神経細胞を破壊します。通常『リン酸化タウ』は脳の一部にとどまっていますが、蓄積した『アミロイドβ』が引き金となり、脳全体へ広がるのです(グラフ参照)」
そして検査手法について徳田教授は説明する。
「神経細胞を破壊した『リン酸化タウ』が、髄液や血液中に漏れると考えられます。今回の検査方法では、ADに特徴的な『リン酸化タウ』の血液中に漏れた濃度を計測することで、早い段階でADの診断を可能にするものです。診断されてショックを受ける人もいると思いますが、治療をすれば確実に進行は遅らせられます」
徳田教授らがAD患者20人と健康な高齢者15人を比較したところ、『リン酸化タウ』の血中濃度は、AD患者のほうが平均で4倍も高いという結果を得た。ADは認知症の一種で、認知症は以下の3つに分類される。
・アルツハイマー:認知症者の大多数がかかる。女性に多い。
・レビー小体型認知症:幻覚や運動障害を合併する特徴がある。男性に多い。
(2)脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血といった脳血管の疾患により、脳の細胞が死滅することで起こる。脳梗塞に起因するものが8割を占める。
(3)その他の認知症
・アルコール性:アルコールを飲むことにより脳が萎縮して起こる。
・正常圧水頭症:脊髄液が脳内にたまり、脳を圧迫することで起こる。
徳田教授は予防の重要性を説く。
「変性性認知症はアルツハイマー病やレビー小体型認知症がその代表で、脳内で異常なタンパク質が悪さをするもの。脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などにより脳の細胞が死に、その機能を失って起こるもの。その他は、アルコール性などです。
認知症の多くは生活習慣病と密接に関係しており健康的な生活を送ることが何よりの予防になります」(徳田教授)