器具で取れないほど歯周ポケットの奥にある汚れは、歯周外科での専門治療が必要になる。

「歯ぐきを切開し、歯根の表面についた汚れを取り除きます」

 切開して汚れを除去すると、歯周組織が壊れて、歯槽骨がなくなっていることがある。

「歯周組織を再生する材料を添付して、歯槽骨の形成を助けなければなりません。しかし、骨のなくなり方によっては形成できないこともあり、すべての人が行える治療ではないのです」

手術で見た目が変わることも

 上あごの歯肉を切除して、下がった部分に移植する方法もあるが、これにも手術が必要だ。

 晴れて歯周病が治ったとしても、残念ながら、見た目が変わってしまうことがある。汚れが除去され、歯ぐきの腫れがなくなったことで歯の隙間が目立つようになるからだ。

 これらは矯正歯科治療やホワイトニングなどで解消できるが、保険がきかない自由診療となるため、費用が高額になることも。

「ここで気をつけたいのは、汚れをしっかり落として歯ぐきを正常に戻してから、矯正歯科治療や調整に入ること。汚れが残った中途半端な状態で行うと、高額な治療費を投じても歯を失うことになりかねません。まずは歯周病専門医のもとでの治療が先決です」

 治療完了しても、歯周病菌が完全にいなくなったわけではない。正しい歯みがきを毎日続けて、歯科医院での定期的なクリーニングが重要。お口の健康は1日にしてならず、なのだ。


【お話を伺ったのは……】
若林健史先生
歯科医。若林歯科医院院長。長年、歯周病治療に従事し、つねに最新の治療を行う第一人者。日本歯周病学会理事、日本歯周病学会専門医・指導医、日本臨床歯周病学会副理事長