開発者に来日してもらったり、アメリカに行って研修を受けたりしたのち、医師や看護師、臨床心理士らとともに、がん患者の子どもを集めてプログラムを実施していった。同時に、全国に広げるため、医療者たちへの教育も始めた。
プログラムは、全6回。子どものペースに合わせて、ゆっくりと進められる。
最初は自己紹介から始まり、2回目は人形などを利用して、がんという病気や治療法について理解する。3回目からは、絵を描いたり、お面やサイコロを作ったりしながら、喜怒哀楽の感情を素直に表現できるようにしていく。
回を重ねると、戸惑っていた子どもたちも次第に打ち解け、「親が元気なほかの子たちがうらやましい」「がんについて聞きたいことがあったけど、ママが落ち込むと思って聞けなかった」など、本音が出てくるようになる。
そうした親の病気をめぐる負の感情やストレスを、日常生活でも上手に発散できるようになることが、このプログラムの狙いだ。
修了するころには参加者の子ども同士が仲よくなり、親のがん治療が終わった後も、同窓会を開くなどして、ときどき集まっているという。
プログラムを続けているうちに、がんが進行し、死を意識せざるをえない状況の親からの相談も増えてきた。その際に問題なのは、親ががんであることを子どもに伝えていないこと。
最初は、がんが治るかもしれないから、子どもに言わなくていいと思いがち。そのうち事態が深刻になるほど伝えにくくなり、まして死について伝えることは、かなり負担が重くなる。