『白黒思考改善療法』の実践方法
『白黒思考改善療法』は、(1)~(7)の問いから構成されています。転職すべきか悩んでいる矢野達郎さん(仮名)の例を用いて、(1)から順番に実践方法を説明していきます。
1.あなたが、しなければならないとわかっているのに、行動を起こせないでいることを書き出してください
【矢野さんの記入例】
・転職
実行すべきだとわかっていても、状況や気持ちの問題でできていないことはありませんか? 矢野さんの場合は転職ですが、離婚や不倫関係の清算、資格や試験の勉強、禁煙、掃除、ダイエットなど、人によってさまざまです。思い当たることを書き出してください。
【あなたの答え】
2. 今のまま、それをしないでいたら、今後どうなりますか?
【矢野さんの記入例】
・ミスを繰り返し、威圧的な上司に怒鳴られ続ける
・残業代が出ないので経済的に不安
・土日出勤も当たり前なので、家族との時間がとれず娘がなつかない
・うつ病になって退職し、妻とは離婚、実家で引きこもりになる
矢野さんの場合は、転職をせずに今の会社に残って仕事を続けたら自分はどうなっているのか、未来を想像してもらいました。自分の場合はどうなるか、想像して書いてみましょう。
また、実際のカウンセリングでは、その先の未来まで想像してもらいます。矢野さんに「その先、転職しない状態がさらに続いたら、どうなると思いますか?」と聞くと、「家族が崩壊して、離婚されてしまうかもしれない」とのことでした。
みなさんも、可能であれば最悪のケースまで想像して、言語化してみてください。想像するのが難しければ、無理に書く必要はありません。
【あなたの答え】
A
3. それをやったとして、最悪の場合、どうなりますか?
【矢野さんの記入例】
・使えないやつだとみなされリストラ
・転職を繰り返す
(1)で聞いた「しなければならないとわかっているのに、行動を起こせないでいること」ですが、頑張って行動できたとしても、うまくいくとは限りませんよね? ここでは、そのうまくいかなかった場合を想像して、そのときの自分の状況を書き出します。矢野さんの場合は、転職したけれどもうまくいかず、最悪の場合、どうなっているかを書き出してもらいました。
【あなたの答え】
B
この(2)と(3)の質問の目的は、未来の「見える化」です。この場合の「見える化」とは、自分の未来に起こりうることを想定して、言葉で明確にすることです。
転職できなかった場合や、転職してもうまくいかなかった場合など、自分にとって好ましくない将来像でもなんとなく想定できていると、どうなるかわからないよりも、ずっと気持ちは楽になります。
原因不明で体調が悪くなったとき、病名がわからないと不安は大きくなりますが、病名がわかると少し気持ちが落ち着くのではないでしょうか。「病気である」という事実は変わりませんが、それでも原因がわかって見通しが立ったほうが、不安や恐怖はやわらぎます。人間の心理とはそういうものなのです。