体罰を肯定する人がいる
加害者への指導のあり方も問われることになる。
「いじめは人権侵害で、許されないと教えないといけません。恐喝や暴力事件など、一線を越えた場合は、非行事件として扱うことです。
重要なのは、いじめかどうかは、被害を受けた側の心身の苦痛で決まるということ。文科省も、必要であれば加害生徒の出席停止を認めています」
教師が加害者と決めつけたり、長時間の指導や強迫的な言動をしたり、指導死につながりかねない問題もある。
「いじめた側も、きちんとした指導をされる権利があるのです。一方的に説教するのではなく、かばってあげる教師が必要。子どもを過度に追い詰めないことです」
一方、いじめの被害者については、自衛手段をとることが求められるという。
「いじめられている側は、メモなどを書き残すことです。法に触れる場合、司法や警察に委ねることも必要です」
教師間のいじめが発覚し物議をかもしている昨今、教員の質が問題視されている。大学の教員養成課程でも課題は多い。
現在、いじめなどへの対応を学ぶ科目は4単位のみ。十分な時間がとれていないのが現状だ。
生徒指導のありようも変化し、確立されたものがない中、文科省は「生徒指導提要」を作っているがなかなか現場に浸透していない。
「教員志望の学生を指導していると、子どもたちを理解したいタイプの学生と管理統制志向のタイプの学生がおり、後者に体罰を肯定する人がいます。
短期的には統制は効き目がありますが、子どもの全人的な発達を支援する視点が必要です。限られた時間の中で、教育には暗いところがあることも伝えたい」
一方、大阪府寝屋川市では、これまでのいじめ対応を見直し、市独自の対応をすることを決めた。東京都世田谷区、滋賀県大津市、兵庫県川西市なども類似の対応をしている。
今年5月29日に就任した広瀬慶輔市長がツイッターで「いじめゼロへ」と書き込むと、いじめ被害者や、いじめによる自殺遺族、支援団体から注目を集めた。
なぜいま、広瀬市長はいじめ問題に力を入れて取り組むのか?
「前市長の政策テーマは“命を守る”でした。痛ましい事件がある中で、安全対策として防犯カメラを2000台設置しました。
次の段階で考えたのは“子どもの命と尊厳を守る”です。他の自治体の例を見て、いじめなどの問題が寝屋川市で起きたとき、いまの体制では、同じような対応になるのではないか。そう認めたところからスタートしました」